成年被後見人の住所変更手続きについて解説します。

成年被後見人の住所を変更する場合に必要とされる手続きについて解説していきます。

りか

様々な事情により、成年被後見人の住所を変更することがあります。今回は、住所を変更する場合に必要とされる手続きについてご説明します。

目次

基本的に、家庭裁判所への許可申立は不要です。

成年被後見人の居住用不動産を処分する場合には、必ず、家庭裁判所の許可を得なければなりませんが(民法859条の3)、住所の変更については、基本的に、家庭裁判所の許可を得る必要はありません。

ただし、住所変更の際に、居住用不動産を処分する場合(以下に該当する場合)は、家庭裁判所に居住用不動産の処分許可申し立てをする必要があります。

  • 旧居(成年被後見人の持ち家)を売却、取り壊し、賃貸に出す場合
  • 旧居(成年被後見人の持ち家)に抵当権を設定する場合
  • 成年被後見人の持ち家でなくても、成年被後見人が借りている物件の賃貸借契約を解除する場合
    • ※賃貸→賃貸の場合は不要です。賃貸→病院に入院等の場合で、入院等と同時に賃貸借契約を解除するときは家庭裁判所の許可が必要です。

つまり、成年被後見人が将来的に居住する可能性のある持ち家や借家・賃貸マンション等を処分する場合には許可が必要になると考えて下さい。

将来、成年被後見人の住むところがなくなってしまうという事態を避けるためですね!

居住用不動産の処分許可申立についてはこちら

住所変更手続きの手順

住所変更の手続きは、以下の手順で進めていきます。

各STEPのタイトルをクリックすると、詳しい説明に飛びます!

STEP

市役所等で住民異動届出手続きをする際に必要となります。

STEP

住所を変更した場合、変更日から14日以内に市町村に届出をしなければなりません。

市役所等で住民異動届出と、それに伴う諸手続きをします。

そして、新住所の住民票を2通取得します。

STEP

成年被後見人の住所を変更した場合は、速やかに家庭裁判所に報告をします。

STEP

成年被後見人の住所を変更した場合は、速やかに東京法務局に変更登記の申請をします。

登記事項証明書の取得

成年被後見人の登記事項証明書を取得します。

証明書は取得から3ヶ月間有効なので、住所を変更することが決まったら、早めに取得しておきましょう。

成年後見登記事項証明申請書および記載例

※出典:東京法務局

  • 提出先は、申請方法によって異なります。
    • 直接出向いて申請する場合・・・最寄りの法務局
    • 郵送で申請する場合・・・東京法務局
  • 必要書類等
    • 手数料として、証明書1通につき収入印紙550円
    • 成年後見人弁護士の運転免許証の写し
    • 郵送申請の場合は、切手を貼付した返信用封筒(宛名は、事務所名だけでなく、成年後見人の弁護士名も記入しましょう。)
  • 東京法務局に郵送で申請する場合の送付先
    • 〒102-8226 東京都千代田区九段南1-1-15 九段第2合同庁舎 東京法務局民事行政部後見登録課 
りか

登記事項証明書は、緊急で必要になる場面というのがほとんどないので、管理人はいつも東京法務局に郵送で請求しています。
最寄りの法務局に出向く場合は、証明申請書の代理人欄に使者の氏名・住所等を記入し、以下の委任状も必要です。

委任状および記載例(成年後見登記事項証明申請)

※出典:東京法務局

市役所等での住民異動届出手続き

ここでの手続きは、同じ市町村内での異動について説明しています。自治体をまたいで異動する場合は、まず、転出先の自治体に転出届を提出し、そのあとで転入先に転入手続きをします。※転出届は郵送でも手続きが可能です。

登記事項証明書の取得ができたら、市役所等へ出向いて住民異動届出および住民異動に伴う諸手続きを行います。

住所を変更した場合は、変更した日から14日以内に市町村へ届出をしなければなりません(住民基本台帳法22条および23条)。

りか

住所を変更するより前に住民異動手続きをすること・郵送で手続きすることはできません。
転出届の場合と混同しないように注意しましょう(転出届は住所変更(転出)の14日前からの手続き・郵送での手続きが可能です。)。

住民異動届出手続き

自治体によっては、ホームページから届出書をダウンロードしたり、事前に手続き予約ができるなど便利なサービスが提供されています。ぜひご活用下さい。

なお、後ほど裁判所と法務局に提出する必要がありますので、新住所の住民票2通を取得しましょう。

住民異動届出手続きの際の持ち物

  • 成年後見登記事項証明書
  • 委任状
  • 住民票の写し等請求用紙(D用紙)※黄色の用紙です
  • 弁護士の運転免許証コピー
  • 弁護士の職印
  • 手続きに出向く者の事務員証
  • 手続きに出向く者の運転免許証(不要な場合もあります)
  • 手続きに出向く者の認印(不要な場合もあります)

委任状(成年被後見人住民移動届出手続き)

委任状(成年後見人住民移動届出手続き)

※ 自治体によっては、委任状の書式が用意されています。その場合は、その書式を使用しましょう。

※また、自治体によっては、パラリーガル個人の住所の代わりに事務所住所の記載で良く、所属弁護士会発行の事務員証を提示すれば運転免許証等の身分証明書は不要な場合もあると思われます(当地ではこの書式のとおりの扱いですので、管理人は長年この様式で申請を行っています。)。

住民異動に伴う手続き

住民異動に伴って、以下の書類等についても住所変更手続きが必要な場合があります。該当する場合は、全ての証書等を自治体に持参し、どのような手続きが必要かを尋ねて、指示に従いましょう。

  • マイナンバーカード(通知カードは手続不要)
  • 国民健康保険・後期高齢者健康保険・介護保険被保険者証(基本的に、後日、郵送で新住所の保険証が届きます)
  • 身体障害者手帳・精神障害者福祉手帳 
  • 年金受給者(まだ年金を受給していない場合は手続不要)

なお、ほとんどの書類について、郵便物の送付先を成年後見人弁護士の事務所に設定できるようになっていることが多いので、まだ手続きをしていない場合は、事務所に送付してもらうように手続きをしましょう。

家庭裁判所へ報告

市役所等での住民異動手続きが完了し、新住所の住民票を受け取ったら、家庭裁判所へ報告書を提出します。

居住地の変更がない場合

住民票上の住所を変更するだけで、成年被後見人本人の実際の居住地は変わらないときの連絡票です。

例えば、成年被後見人本人は長年同じ介護施設などに入居しており、親族の家に住民票を置いていたが、親族の引越に伴い、成年被後見人の住民票も親族の引越先の住所に移動したなどの場合です。

連絡票(成年被後見人の住所変更•居住地変更なし)

連絡票(成年被後見人住所変更)
  • 住民票上の異動のみで、居住地に変更はない旨を書き加えても構いません。
  • 成年被後見人の住民票原本を添付します。
  • 住民票原本の還付が必要な場合は、写しも添付しましょう。原本と写しが照合されたあとで、原本の返還を受けることができます。

居住地の変更がある場合

成年被後見人本人の実際の居住地が変わり、住民票もその居住地に移す場合の連絡票です。

例えば、病院に長期入院していた成年被後見人が、体調の回復に伴い、新しくサービス付き高齢者住宅などを契約して入居したなどの場合です。

連絡票(成年被後見人の住所変更•居住地変更あり)

連絡票(成年被後見人住所変更)
  • 成年被後見人の住民票原本を添付します。
  • 住民票原本の還付が必要な場合は、写しも添付しましょう。原本と写しが照合されたあとで、原本の返還を受けることができます。
  • 入居先の契約書など一式の写しを添付します。

東京法務局へ変更登記の申請

成年被後見人の住所を変更した場合は、必ず、東京法務局に変更登記申請を行わなければなりません。

なお、変更登記が完了しても、東京法務局から特に連絡はありません

変更登記申請は東京法務局のみの取り扱いです。遠方の場合は郵送にて申請をします。

変更登記申請書および記載要綱

※出典:東京法務局

申請書に添付する書類等

  • 成年被後見人の住民票原本
  • 成年後見人弁護士の運転免許証写し
  • 手数料(収入印紙)は不要です。
  • 申請から登記完了までには概ね10日程度要します。
  • 東京法務局に郵送で申請する場合の送付先
    • 〒102-8226 東京都千代田区九段南1-1-15 九段第2合同庁舎 東京法務局民事行政部後見登録課  

新住所での登記事項証明書が必要な場合は、変更登記の申請書と一緒に登記事項証明申請書も同封しておくと、変更登記完了次第、新しい証明書を受け取ることができます。

なお、東京法務局に出向いて申請をする場合はこちらの書式・委任状をご利用下さい。

変更登記申請書記載例(代理人の場合)および委任状

※出典:東京法務局

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おわりに 

以上、 成年被後見人の住所を変更する場合に必要とされる手続きについて解説しました。

りか

今日も笑顔でがんばりましょう!

      

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