家事調停事件の不成立証明書の申請方法について解説していきます。
主に離婚関係の調停→訴訟移行の際に必要となる書類です。調停・訴訟ともに家庭裁判所が管轄するようになってからは、提出不要となることが多く、申請する機会がぐっと減りました。
調停前置主義とは
調停前置主義とは
調停前置主義とは、「一般調停事件・特殊調停の対象となる事件については、訴えを提起する前に、まず調停の申し立てをしなければならない」という法律上の原則です。
調停前置主義が定められているのは、家事事件は、その性質上訴訟による解決になじみにくいことから、第一次的には当事者間での話し合い(=調停)による解決を図ることが妥当であるためです。また、訴訟手続は公開法廷にて行われますが、調停であれば手続きは非公開なので、家庭内の問題を世間に公開することなく解決することができます。
第244条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。
出典:e-Govポータル 家事事件手続法第257条1項
調停前置主義の対象となる事件
では、訴訟を提起する前に、まず調停を経なければならない、「一般調停事件・特殊調停の対象となる事件」には、どのようなものがあるのでしょうか。
一般調停事件
一般調停事件とは、家庭に関する紛争等の事件のうち、別表第2調停及び特殊調停を除いた事件をいい、離婚や離縁、夫婦関係の円満調整、離婚後の紛争、内縁関係の調整や親族間での紛争、遺留分減殺請求などが代表的な例としてあげられます。
一般調停事件は、ほとんどが訴訟の対象となりますが、なかには訴訟の対象とならない事件もあります。例として、夫婦関係の円満調整が挙げられます。
例として挙げられた、夫婦関係の円満調整では、夫婦が仲直りして争いが解決すればそれでよく、必ずしも身分や法律行為に対する効果がないからですね!
特殊調停事件
特殊調停事件とは、本来は人事訴訟(身分関係を争う訴訟)によって判決を得ることで解決を図る事件のうち、離婚や離縁の訴えを除いたもので、以下のような事件が該当します。
- 婚姻の無効、取消し
- 協議離婚の無効、取消し
- 婚姻関係の存否確認
- 嫡出否認
- 認知
- 認知の無効、取消し
- 父を定める訴え
- 実親子関係の存否確認
- 養子縁組の無効、取消し
- 協議離縁の無効、取消し
- 養親子関係の存否確認
- その他の身分関係の形成または存否の確認
調停前置主義の対象となる事件が不成立に終わった場合
一般調停事件のうち訴訟の対象にもなる事件及び特殊調停事件が不成立となった場合、最終的な解決のためには、改めて裁判所に訴訟を提起する必要があります。
原則として、これらの事件は、調停不成立となっても、自動的に審判に移行することはありません。
それに対して、別表第2調停事件では、調停が不成立の場合には、調停の申立て時に審判の申立てがあったとみなされるので、自動的に審判に移行して結論が示されることになります。
なお、例外として、調停が成立しないときでも、家庭裁判所が当事者双方の様々な事情を考慮し、審判によって一定の解決を示すことが相当だと判断した場合は、調停に代わる審判をすることができると規定されています(家事事件手続法第284条)
調停不成立証明書の申請方法
前述のとおり、一般調停事件・特殊調停の対象となる事件については、訴えを提起する前に、まず調停の申し立てをしなければなりません。そのため、訴訟を提起する際には、既に調停を経ていることを証明する必要があります。
この、既に調停を経ていることを証明する書類が調停不成立証明書であり、不成立となった調停が係属していた裁判所に申請をして交付を受けます。
なお、調停不成立の通知を受けた日から2週間以内に訴えを提起した場合には、調停申立の際に収めた手数料に相当する額を控除することができます(民事訴訟法第266条)ので、不成立証明と一緒に印紙額についても証明を受けましょう。
調停と訴訟の管轄裁判所が同じである場合は、調停不成立証明書の提出は不要であることが多いです。
裁判所によっては、管轄裁判所だけでなく、担当裁判官も同一でないと不要とならない場合もあります。
家事調停不成立等証明申請書
家事調停不成立等証明申請書
- 提出先は、不成立となった調停事件が係属していた裁判所です。
- これから訴訟を提起しようとする裁判所とは異なる場合がありますのでご注意ください。
- 証明書発行手数料として収入印紙300円を添付します。
- 調停不成立のみを証明してもらう場合(調停申立の収入印紙額についての証明が不要な場合)は150円です。(証明事項ひとつにつき手数料150円であるため)。
調停不成立のみを証明してもらう場合は、こちらの申請書式で申請することもできます。
- この書式のとおり、2枚とも裁判所に提出すると、1枚目の空欄に証明印が押印され、調停不成立等証明書として交付されます。
訴訟からの代理人である場合
調停事件は依頼者が自分で調停を行っていた、他の弁護士が代理人であったなど、調停事件では代理人ではなかったけれども、様々な事情により、訴訟からの代理人として委任を受けるケースがあります。
このケースでは、調停不成立証明書を申請する際に、その申請のための委任状が必要です。
受任の際に、訴訟手続のための委任状を書いてもらっていますよね。その委任状ではだめなのですか?
あれ?そもそも、普通は証明書申請等の際に委任状を添付することはないですよね・・・なんだか混乱してきました。
受任の際の委任状は、あくまでも訴訟手続のためのものです。
普段、証明書申請等の際に委任状を添付していないのは、その事件の代理人の地位をもって申請を行っていたからです(調停申立書等と一緒に委任状を提出しているので、裁判所確認済みのため)。
訴訟からの代理人になるケースでは、調停の時には代理人ではなかったので、調停事件の代理人として申請することができません。そこで、証明書申請の代理人として依頼者からの委任を受ける必要があるのです。
委任状記載例
第1 事 件
1 相 手 方 千葉 花子
2 裁 判 所 東京家庭裁判所
3 事 件 令和◯年(家イ)夫婦関係調整(離婚)調停申立事件
第2 委任事項
1 上記事件の調停不成立等証明申請に関する一切の件
- 訴訟委任状をもとに作成し、事件欄に、証明書を必要とする事件名(調停事件のもの)を記入します。
- タイトルは、「委任状」としましょう。
委任状の基本についておさらいしたい場合はこちら
おわりに
以上、家事調停事件の不成立証明書の申請方法について解説しました。
今日も笑顔でがんばりましょう!