訴状に添付する資格証明書とは?必要な書類を事例ごとに具体的に解説します。

訴状提出の際に必要とされる、訴訟当事者(原告・被告)の資格証明書について解説していきます。

りか

訴状を提出する際には、様々な添付すべき書類があります。今回は、その中で訴訟当事者としての資格を証明する書類についてご説明します。

目次

民事訴訟における当事者とは

民事訴訟における当事者とは、訴訟手続の主体として、裁判所に対して裁判権の行使を求める者と、その相手方を指します。

りか

第一審における原告/被告、第二審における控訴人/被控訴人、第三審における上告人/被上告人のことです。

当事者は、当事者になることができる一般的な資格 (=当事者能力)を有していなければなりません。
当事者能力は、私法上の権利能力者、例えば、自然人や法人に与えられます(民事訴訟法第28条)。それにより、自然人や法人は訴訟当事者として訴えを提起し、自らの権利・義務について争うことができるのです。

そして、この当事者能力を有していることを示すために裁判所に提出するのが、総じて資格証明書と呼ばれる書類です。(当事者の性質により、資格証明書とする書類は異なります。)

よく似た言葉ですが、「当事者能力」は「当事者適格 」とは異なります。「当事者能力」は一般的な資格を有しているかという点を一律に判断されますが、「当事者適格」は、個々の訴訟において、当事者として訴えを提起する正当な利益があるか否かを問題とするものです。

当事者適格とは、特定の訴訟物との関係で、訴訟当事者となることのできる資格のことです。当事者適格は、訴訟追行権といわれることもあります。当事者適格は、特定の訴訟物たる権利関係について法律上の利害関係が対立している者に認められるものであり、特定の訴訟物との関係から個別具体的に判断されます。この点において、当事者となることのできる一般的資格である当事者能力とは区別されます。民事訴訟では、ある特定の訴訟において正当な当事者となる資格の有無について、一般的な資格である当事者能力と特定の訴訟物との関係での資格である当事者適格という、二段階での審査が行われることとなります。

出典:ウィキバーシティ 当事者適格
りか

「当事者適格」について判断するのは弁護士の仕事であり、私たちパラリーガルが関与することはほぼないと思われますが、勉強を進めていくと疑問を覚える言葉であるため簡単に記載しました。

自然人(いわゆる人)の場合

当事者が自然人(いわゆる人)である場合は、原則として提出すべき資格証明書はありませんが、以下の例外があります。

当事者が自営業者で屋号を名乗っている場合や、芸名・通称がある場合、訴状には「(通称または屋号)こと(本名)」と記載しますが、提出すべき資格証明書はありません。

離婚訴訟などの人事訴訟の場合

離婚事件などの人事訴訟の場合は、資格証明書として、戸籍謄本を提出します。

「人事訴訟」とは、人の身分関係の確定・形成を目的とする民事訴訟を指します。例えば、婚姻、養子縁組、親子関係に関する訴訟などがこれにあたります。

訴状の記載例

訴状には、住所のほかに本籍地も記載します。

  本籍 東京都〇〇区〇〇町1丁目1番1号

  住所 〒103-〇〇〇〇 東京都〇〇区〇〇町1丁目1番1号

      原 告          東京 太郎

未成年の場合

当事者が未成年の場合には本人に行為能力がないため、法定代理人として親権者(通常は両親)が当事者本人に代わって訴訟行為を行います。

資格証明書として、戸籍謄本を提出します。

未成年者及び成年被後見人は、法定代理人によらなければ、訴訟行為をすることができない。ただし、未成年者が独立して法律行為をすることができる場合は、この限りでない。

出典:e-Govポータル 民事訴訟法第31条

訴状の記載例

  〒103-〇〇〇〇 東京都〇〇区〇〇町1丁目1番1号

      原 告          東京 太郎

  〒103-〇〇〇〇 東京都〇〇区〇〇町1丁目1番1号

      上記法定代理人親権者父  東京 一郎

  〒103-〇〇〇〇 東京都〇〇区〇〇町1丁目1番1号

      上記法定代理人親権者母  東京 花子

成年被後見人の場合

当事者が成年被後見人の場合には、法定代理人として成年後見人が当事者本人に代わって訴訟行為を行います。

資格証明書として、成年後見登記事項証明書を提出します。

成年被後見人を相手方として訴訟提起をする場合は、そもそも相手方が成年被後見人であることが判明していない場合もあるので、訴訟提起の段階で成年被後見人であることの記載が漏れ、資格証明書の添付がなくても、後で補正・追完をすれば大丈夫です。

訴状の記載例

  〒103-〇〇〇〇 東京都〇〇区〇〇町1丁目1番1号

      原 告      東京 太郎

  〒103-〇〇〇〇 東京都〇〇区〇〇町2丁目2番2号

      上記成年後見人  東京 一郎    

本人が破産宣告を受け、破産管財人が選任されている場合

当事者本人が破産宣告を受けて破産管財人が選任されている場合には、法定代理人ではなく、破産管財人が直接の当事者となります。

資格証明書として、破産裁判所から破産管財人の証明書の交付を受け、提出します。

破産財団に関する訴えについては、破産管財人を原告又は被告とする。

出典:e-Govポータル 破産法第80条

訴状の記載例

  〒103-〇〇〇〇 東京都〇〇区〇〇町1丁目1番1号

      東京法律事務所 (送達場所)

       電話 00−1234−5678

       FAX 00−1234−5690

    原 告 破産者千葉花子破産管財人

        弁護士  東 京 一 郎

りか

破産管財人は法定代理人ではなく、直接の当事者となるので、破産管財人の住所と氏名を記載します。

相続財産清算人の場合

当事者本人が故人かつ相続放棄によって相続人が存在せず、相続財産精算人が選任されている場合は、資格証明書として、家庭裁判所の相続財産清算人選任審判正本を提出します。

写しではなく、正本が必要ですので気を付けて下さい!

訴状の記載例

(亡千葉花子最後の住所)

  〒103-〇〇〇〇 東京都〇〇区〇〇町1丁目1番1号

      原 告   亡千葉花子相続財産

      同代表者相続財産清算人  東京 一郎 

     (上記送達場所)

      〒103-〇〇〇〇 東京都〇〇区〇〇町2丁目2番2号    

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会社または登記された法人の場合

会社の場合

当事者が会社の場合は、資格証明書として、登記事項証明書を提出します。

「登記事項証明書」は、1通の枚数が50枚を超える場合、手数料が加算されますが、大企業の場合は枚数が多くなることがあります。訴訟当事者の資格証明書として訴状に添付する場合は、会社所在地と会社名、法人番号、代表者の情報のみが記載された「代表者事項証明書」で足ります。

訴状の記載例

訴状には、本店所在地と名称、代表者として登記された取締役(代表取締役)の氏名を記載します。

  〒103-〇〇〇〇 東京都〇〇区〇〇町1丁目1番1号

      原   告      株式会社東京商事

      上記代表者代表取締役 東 京 一 郎

登記された法人の場合

当事者が登記された法人の場合は、資格証明書として、登記事項証明書を提出します。

登記された法人とは、例えば、NPO法人や宗教法人などです。登記事項証明書は、会社の場合と同様に法務局で取得できます。

訴状の記載例

訴状には、主たる事務所の所在地と名称及び代表者の資格と氏名を記載します。

  〒103-〇〇〇〇 東京都〇〇区〇〇町1丁目1番1号

      原   告  特定非営利活動法人 〇〇

      上記代表者代表理事 東 京 一 郎

登記されていない団体の場合

社団としての実体はあっても、法律が権利能力を認めていない、いわゆる「権利能力なき社団」です。登記のない労働組合、管理組合(マンション管理組合など)、任意団体(同窓会、町内会など)等がこれに当たります。

法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。

出典:e-Govポータル 民事訴訟法29条

資格証明書として、その団体の寄付行為、規約等と代表者を選出した議事録等を提出します。

りか

例えば、マンション管理組合の場合は、理事長が選出された総会の総会議事録を提出します。

その当事者が相手方の場合は入手困難なことが多いことから、訴状の段階では必ずしも資格証明書を提出しなくとも大丈夫です。

訴状の記載例

訴状には、事務所の所在地と名称及び代表者の役職(議長、執行委員長、代表理事等)、氏名を記載します。

  〒103-〇〇〇〇 東京都〇〇区〇〇町1丁目1番1号

      原   告 〇〇マンション管理組合

      上記代表者理事長 東 京 一 郎

地方公共団体、国の場合

地方公共団体や国が当事者となる場合、通常の民事訴訟事件の場合にはそれぞれ代表者が決まっています。

地方公共団体や国の代表者は公知の事実なので、資格証明書を添付する必要はありません。

以下はそれぞれの訴状への記載例です。

地方公共団体の場合

地方公共団体の代表者はその地方公共団体の長となりますので、市役所、県庁等の住所を記載し、

  原 告  〇〇市

       代表者 〇〇市長 〇〇 

  被 告  〇〇県

       代表者 〇〇県知事 〇〇

等と記載します。

国の場合

国が当事者の場合には、法務大臣が代表者となりますので、法務省の住所を記載し、

  被 告  国

       代表者 法務大臣 〇〇

と記載します。

おわりに 

以上、訴状提出の際に必要とされる訴訟当事者の資格証明書について解説しました。

訴状の記載に間違いがないか、それぞれの資格証明書と照らし合わせてしっかりチェックをしましょう。

りか

今日も笑顔でがんばりましょう!

      

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