強制執行のための事前準備としての執行文付与申請、送達証明申請、送達申請の手続き

不動産強制競売や債権差押命令申立などの強制執行手続きを行う際に必要な書類の申請手続について解説していきます。

りか

強制執行手続に着手する際には、事前準備として証明書等が必要です。申請の方法を詳しく解説していきます。

目次

強制執行のための準備

強制執行は、債権者の権利を強制的に実現する手続きで、債務名義によってその権利を証明し、執行を行うものです(民事執行法第25条)。

しかし、債務名義を得たからといって、即、強制執行ができるわけではありません。強制執行の申立て前にいくつか準備が必要な事柄があります。申立てをする事件によって準備すべき書類は異なりますが、どのような事件でも必ず提出しなければならない共通書類があります。それは、

  1. 債務名義の正本
  2. 債務名義の送達証明書
  3. 執行文(および、執行文の種類によってはその執行文の送達証明書も必要)

の3つの書類です。次項から、取得方法についてひとつずつご説明します。

判決確定証明申請書はこちらの記事に掲載しています

判決送達証明申請書

送達証明書とは、被告(=強制執行の債務者)に対し、債務名義がいつ送達されたかを証明する文書です。

強制執行を開始するためには、債務名義の正本または謄本が、あらかじめ(または同時に)債務者に送達されていなければなりません(民事執行法第29条前段)。

これは、債務者が強制執行を受ける根拠となる文書を受け取ることを保障するために定められているものです。したがって、強制執行の申立をする際には、送達証明書を添付する必要があります。

判決送達証明申請書

判決正本送達証明申請書
1枚目
判決正本送達証明申請書
2枚目

被告が複数の場合は、被告ごとに証明書が必要です。その場合は、「被告〇〇に対し,令和3年 月 日に送達されたことを証明されたく申請します。」と文中で特定します。

  • 提出先は、当該事件記録を保管している裁判所です。
    • 事件記録は、裁判が確定した場合、第一審裁判所で保管することになっているため、通常、一審裁判所へ申請をします。
    • 控訴中などのため、事件記録が上級裁判所に系属している場合は、その上級裁判所へ申請します。
  • 証明書発行手数料として収入印紙150円を添付します。
  • この書式のとおり、2枚とも裁判所に提出すると、1枚目の空欄に証明印が押印され、証明書として交付されます。
  • 証明書が複数枚必要な場合は、1枚目を必要な数だけ作成し、2枚目の請書部分の受け取り枚数をその必要枚数に変更します。添付する収入印紙は、150円×必要枚数です。
  • 申請人が法人の場合で、代表者が判決の表示と異なる場合には、資格証明書(商業登記簿謄本)の添付が必要になります。
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送達申請書

送達証明を取得するにあたっては、あらかじめ当該書類が送達されていなければなりません。もしも、何らかの事情により、送達がされていない場合は、裁判所や公証役場に対して送達申請をする必要があります。

そもそも送達をしていなければ送達証明書をとることができないからですね!

債務名義等の送達申請

判決や仮執行宣言付支払督促などは、裁判所の職権で必ず送達しなければならないとされています(民事訴訟法第255条)。

しかし、和解調書や調停調書などは、こちらから送達申請をしないと、相手方には送達されません。

通常は、裁判や調停の期日において、弁護士が送達申請をしているはずですが、万が一、申請をしていない場合は、速やかに送達申請をします。

りか

余談ですが、裁判所への申立てその他の申述は、「書面又は口頭ですることができる」とされています(民事訴訟規則1条)ので、弁護士は、和解の席上で、裁判所書記官に口頭で和解調書等の送達を申請することができます。

債務名義等送達申請書

債務名義等送達申請書

送達申請と同時に、送達証明申請もしておくと、何度も裁判所に出向かなくて済み、手間を省くことが出来ます。

  • 提出先は、当該事件記録を保管している裁判所です。
    • 事件記録は、裁判が確定した場合、第一審裁判所で保管することになっているため、通常、一審裁判所へ申請をします。
    • 控訴中などのため、事件記録が上級裁判所に系属している場合は、その上級裁判所へ申請します。
  • 手数料(収入印紙)は不要です(1度目に限る)。
  • 送達申請の場合は、特別送達用の切手の添付が必要です。送達する文書の重さによって料金が変わりますので、提出前に裁判所に問い合わせましょう。
  • 申請人が法人の場合で、代表者が判決の表示と異なる場合には、資格証明書(商業登記簿謄本)の添付が必要になります。

特別送達料金とは、一般書留料金(480円) + 特別送達料金(630円) + 基本料金 です。

よって、基本料金が84円(郵便物の重さが25グラムまで)の場合は、1194円になります。※令和5年10月現在

家庭裁判所への送達申請等

家庭裁判所の給付を命ずる調停調書、審判書等を債務名義とする場合、家庭裁判所の場合は当事者にはそれらの謄本しか交付されていません。強制執行は債務名義の正本によらなければできませんので、強制執行にあたっては、まず債務名義の正本の交付申請と相手方への正本の送達の申立をしなければなりません

正本とは、原本の写しでありながら原本と同じ力を持った文書をいいます。一方で、謄本とは、原本の写し(コピー)にとどまり、原本と同じ力を持ちません。

正本送達(証明)申請・確定証明申請(家庭裁判所)

正本送達(証明)申請・確定証明申請
出典:仙台家庭裁判所

※この書式見本では、申請人に執行文付きの調停調書正本を交付し、相手方には調停調書正本を送達、さらにその送達証明書を交付することを申請しています。

  • 家庭裁判所への各種証明書申請の際はこの見本書式の形式で申請することがほとんどです(各地の裁判所サイトに申請書式が記載されています)。
  • 民事の証明書等とは異なり、家庭裁判所がいちから証明書を作成します。
  • 手数料について
    • 正本、謄本の交付申請の場合は、調停調書(審判書)用紙の合計枚数(正本の場合は、認証用紙分1枚を加える。)に150円を掛けた金額の収入印紙を添付します。(枚数が分からなければ家庭裁判所へお問い合わせください。)。
      • 例1:3ページある調停調書について、謄本を交付申請する場合3枚×150円=450円
      • 例2:3ページある調停調書について、正本を交付申請する場合4枚(調停調書3枚+認証1枚)×150円=600円
    • 各種証明書の交付申請の場合は、証明書1通(証明事項一つ)について150円の収入印紙を添付します。
    • 執行文付与申請の場合は、収入印紙300円
    • 送達申請の場合は、手数用は不要です(1度目に限る)。
  • 切手
    • 送達申請の場合は、特別送達用の切手の添付が必要です。送達する文書の重さによって料金が変わりますので、提出前に家庭裁判所に問い合わせましょう。

特別送達料金とは、一般書留料金(480円) + 特別送達料金(630円) + 基本料金 です。

よって、基本料金が84円(郵便物の重さが25グラムまで)の場合は、1194円になります。※令和5年10月現在

※裁判所によっては、執行文付与申立書の提出を求められる場合があります。その場合は、以下の書式をご利用下さい。(出典:最高裁判所)

執行証書の送達申請(公証役場)

執行証書とは、公証人が作成する公正証書のうち、民事の確定判決などと同様に、債務名義となりうる書面です。

  1. 金銭の一定の額の支払(又はその他の代替物や有価証券の一定の数量の給付)を目的とする請求についての公正証書であること。公正証書が執行証書として強制執行が認められているのは、金銭支払請求権や代替物等の給付請求権に限られ、建物の明渡請求権や動産の引渡請求権には認められていません。
  2. 債務者・連帯保証人等が債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服するとの陳述(強制執行認諾文言)があること。「直ちに」に強制執行に服するとは、裁判手続を経て判決等の他の債務名義を取得することなく、執行証書自体により強制執行を受けても異存がないという意味です。

執行証書に基づいて強制執行を行う場合は、公正証書を作成した公証役場で、公正証書正本又は謄本の送達 の申立てをして、送達証明書の交付を受ける必要があります。

なお、公証役場での手続きはここでは割愛します。各地の公証役場サイトなどでご確認ください。

執行文付与申請書

勝訴判決が出されて確定した、もしくは仮執行宣言の付いた勝訴判決が出た、という場合でも、この判決正本(債務名義)のみでは、強制執行することはできません。原則として、強制執行は、執行文の付与された債務名義の正本に基づいて実施されます。

強制執行は、執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施する。ただし、少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促により、これに表示された当事者に対し、又はその者のためにする強制執行は、その正本に基づいて実施する。

出典:e-Govポータル 民事執行法第25条(強制執行の実施)

執行文とは、裁判所書記官や公証人が、債務名義が債務名義としての要件を備え、執行力があることを証する文言で、債務名義正本の末尾に付されるものです。

執行文には、

  • 単純執行文
  • 承継執行文
  • 条件成就執行文

の3つの種類があります。

そして、執行文付与の申請先は、

  • 執行証書以外 ・・・ 当該事件記録が存在する裁判所
  • 執行証書 ・・・・ 公正証書の原本が保管されている公証役場

です。

なお、次の文書には執行文は不要です。

  • 仮執行宣言付支払督促(民事執行法第25条但書)
  • 少額訴訟確定判決(民事執行法第25条但書)
  • 仮執行宣言付少額訴訟判決(民事執行法第25条但書)
  • 金銭の支払を命じる旨の家事審判(家事事件手続法第75条)
  • 養育費・婚姻費用等の扶養義務に基づくものや遺産分割、財産分与等に関する調停調書(家事事件手続法第268条1項)
  • 家事審判書正本の場合は、執行文は不要ですが、確定証明書が必要になります。

単純執行文

単純執行文は、特に証明などの必要のない、通常の執行文です。

単純執行文の付与は、債務者には通知されません。

単純執行文の付与申請書

執行文付与申請書
単純執行文付与申請書

被告が複数いて、そのうち1名についてのみ執行文を付与してもらうときは、「被告〇〇に対して執行文を付与されたく申請します」と文中で特定します。

  • 提出先は、当該事件記録を保管している裁判所です。
    • 事件記録は、裁判が確定した場合、第一審裁判所で保管することになっているため、通常、一審裁判所へ申請をします。
    • 控訴中などのため、事件記録が上級裁判所に系属している場合は、その上級裁判所へ申請します。
  • 執行文付与の手数料として収入印紙300円を添付します。
  • この申請書と、債務名義の正本を裁判所に提出すると、債務名義の末尾に執行文が綴られて、「執行力のある債務名義」として交付されます。
  • 更正決定がなされている場合は、更正決定正本も添付します。
  • 申請人が法人の場合で、代表者が債務名義の表示と異なる場合には、資格証明書(商業登記簿謄本)の添付が必要になります。

承継執行文

債務名義成立後に、被告の死亡による相続などの理由で、当事者の権利・義務が他者に承継される場合があります。そのような場合は、執行文付与申請の際に、権利の承継を証する文書を提出した時に執行文の付与がされます(民事執行法第27条2項)。

これを、「承継執行文」と言います。

強制執行申立を行うときには、執行文と(承継を証する)証明書謄本があらかじめ(または同時に)承継人に送達されていなければなりません(承継人に対し防御の機会をあたえるため)ので(民事執行法第29条後段)、承継執行文の付与申請と同時に、送達申請書を裁判所に提出します。

りか

以下の3つの申請書と添付書類等を、同時に裁判所に提出しましょう。

承継執行文の付与申請書

承継執行文付与申請書
  • 提出先は、当該事件記録を保管している裁判所です。
    • 事件記録は、裁判が確定した場合、第一審裁判所で保管することになっているため、通常、一審裁判所へ申請をします。
    • 控訴中などのため、事件記録が上級裁判所に系属している場合は、その上級裁判所へ申請します。
  • 権利義務承継の事実を証明する書面の提出が必要です。例えば、以下の書類が挙げられます。これらの書面は、承継人にも送達されますので、裁判所用のほかに、承継人の人数分の副本を提出します。
    • 相続の場合→戸籍謄本
    • 法人の合併の場合→登記簿謄本
    • 債権譲渡の場合→契約書、譲渡通知書
    • 代位弁済の場合→代位弁済証書
  • 執行文付与の手数料として収入印紙300円を添付します。
  • この申請書と、債務名義の正本を裁判所に提出すると、債務名義の末尾に執行文が綴られて、「執行力のある債務名義」として交付されます。
  • 更正決定がなされている場合は、更正決定正本も添付します。
  • 申請人が法人の場合で、代表者が債務名義の表示と異なる場合には、資格証明書(商業登記簿謄本)の添付が必要になります。

承継執行文及び証明書謄本送達申請書

承継執行文及び証明書謄本送達申請書
  • 手数料(収入印紙)は不要です(1度目に限る)。
  • 送達申請の場合は、特別送達用の切手の添付が必要です。送達する文書の重さによって料金が変わりますので、提出前に裁判所に問い合わせましょう。

特別送達料金とは、一般書留料金(480円) + 特別送達料金(630円) + 基本料金 です。

よって、基本料金が84円(郵便物の重さが25グラムまで)の場合は、1194円になります。※令和5年10月現在

承継執行文及び証明書謄本送達証明申請書

承継執行文及び証明書謄本送達証明申請書
1枚目
承継執行文及び証明書謄本送達証明申請書
2枚目
  • 証明書発行手数料として収入印紙150円を添付します。
  • この書式のとおり、2枚とも裁判所に提出すると、1枚目の空欄に証明印が押印され、証明書として交付されます。

条件成就執行文

和解調書にもとづく場合など、一定の条件を満たさないと強制執行ができない場合があります。そのような場合は、執行文付与申請の際に、条件成就を証する文書を提出した時に執行文の付与がされます(民事執行法第27条1項)。

これを、「条件成就執行文」と言います。

条件成就執行文を必要とする具体的な事例は以下のような場合があります

  • 不確定期限(必ず訪れるけれども、それがいつかは分からない)
    • その期限の到来を債権者が証明する必要があります。
    • 例えば、「被告の父が死亡したときは、1年以内に被告は原告に対して本件建物を明け渡す。」という和解条項に基づいて建物明渡しの強制執行をする場合には、父が死亡したことを戸籍謄本等を添付して証明します。
  • 先給付
    • 建物明渡訴訟において、「1.原告は被告に対し、本件建物の立退料として金〇〇万円を支払う。 2.被告は前項の立退料の支払を条件として、その支払いを受けた時から1ヶ月以内に本件建物を明け渡す。」のように、原告が先に立退料を被告に支払うことが明渡しの条件となっているような場合、領収証等でその支払いをしたことを証明します。
    • 被告が立退料を受け取らない場合には、供託をして1ヶ月経過してから供託書を添付して執行文付与申請をします。

強制執行申立を行うときには、執行文と(条件成就を証する)証明書謄本があらかじめ(または同時に)相手方に送達されていなければなりません(相手方に対し条件成就している事実を知らせ、防御の機会をあたえるため)ので(民事執行法第29条後段)、条件成就執行文の付与申請と同時に、送達申請書を裁判所に提出します。

りか

申請手続きは、承継執行文付与の場合とほぼ同じです。
以下の3つの申請書と添付書類等を、同時に裁判所に提出しましょう。

条件成就執行文付与申請書

条件成就による執行文付与申請書
  • 提出先は、当該事件記録を保管している裁判所です。
    • 事件記録は、裁判が確定した場合、第一審裁判所で保管することになっているため、通常、一審裁判所へ申請をします。
    • 控訴中などのため、事件記録が上級裁判所に系属している場合は、その上級裁判所へ申請します。
  • 条件が成就したことを証明する書面の提出が必要です。この書面は、相手方にも送達されますので、裁判所用のほかに、相手方の人数分の副本を提出します。
  • 執行文付与の手数料として収入印紙300円を添付します。
  • この申請書と、債務名義の正本を裁判所に提出すると、債務名義の末尾に執行文が綴られて、「執行力のある債務名義」として交付されます。
  • 更正決定がなされている場合は、更正決定正本も添付します。
  • 申請人が法人の場合で、代表者が債務名義の表示と異なる場合には、資格証明書(商業登記簿謄本)の添付が必要になります。

条件成就執行文及び証明書謄本送達申請書

条件成就執行文及び証明書謄本送達申請書
  • 手数料(収入印紙)は不要です(1度目に限る)。
  • 送達申請の場合は、特別送達用の切手の添付が必要です。送達する文書の重さによって料金が変わりますので、提出前に裁判所に問い合わせましょう。

特別送達料金とは、一般書留料金(480円) + 特別送達料金(630円) + 基本料金 です。

よって、基本料金が84円(郵便物の重さが25グラムまで)の場合は、1194円になります。※令和5年10月現在

条件成就執行文及び証明書謄本送達証明申請書

条件成就執行文及び証明書謄本送達証明申請書
1枚目
条件成就執行文及び証明書謄本送達証明申請書
2枚目
  • 証明書発行手数料として収入印紙150円を添付します。
  • この書式のとおり、2枚とも裁判所に提出すると、1枚目の空欄に証明印が押印され、証明書として交付されます。

以下のようなケースは、単純執行文で足り、条件成就執行文は必要ありません。

  • 懈怠約款(けたいやっかん)
    • 例えば、毎月末日の分割弁済が定められている場合において、「被告が第○項の分割金の支払いを○回以上怠った時は、被告は期限の利益を喪失し、原告に対し残額全額を直ちに支払う。」という条項がある場合には、分割金の支払いを○回以上怠ったことは、債権者が立証すべき事項ではありません。
  • 引換給付
    • 例えば、建物明渡訴訟において、「被告は、第○項の立退料の支払いと引き換えに原告に対し本件建物を明け渡す。」というような引換給付の場合には、条件ではなく同時履行です。

執行証書(公証役場)

公正証書を作成した公証役場で、執行文付与の申立てをします。

なお、公証役場での手続きはここでは割愛します。各地の公証役場サイトなどでご確認ください。

複数の執行文付与申請書

債務者が不動産、銀行預金などいくつかの財産を有しており、それらの財産に対して同時に強制執行を申し立てる場合は、執行文数通付与の申立をします(民事執行法第28条1項)

まだ強制執行の申立てをしたことがなく、これから同時に複数の申立てを行う場合に申請します。

強制執行を申し立てたことがないので、債務名義正本を持っています!

なお、執行文を数通付与・再度付与した場合には、執行文付与に対する異議申立等の機会を保障するため、債務者に対し、執行文を付与した旨と執行文の通数を通知しなければならないとされています(民事執行規則第19条)。

債務者への通知は裁判所書記官が職権で行いますので、承継執行文付与や条件成就執行文付与の場合とは異なり、こちらから送達申請をする必要はありません。

執行文数通付与申請書

執行文数通付与申請書
  • 申請書への記入枚数について
    • この申請書は、既存の債務名義に執行文を1通付与し、さらに、債務名義1通を再交付してその債務名義にも執行分を1通付与してもらう場合の記載例です。⇨執行力ある債務名義が2セット出来上がります。
    • 例えば、執行力ある債務名義が3セット必要な場合は、「判決正本2通交付のうえ、執行文を3通付与されたく」と記載します。
  • 提出先は、当該事件記録を保管している裁判所です。
    • 事件記録は、裁判が確定した場合、第一審裁判所で保管することになっているため、通常、一審裁判所へ申請をします。
    • 控訴中などのため、事件記録が上級裁判所に系属している場合は、その上級裁判所へ申請します。
  • 手数料
    • 執行文付与の手数料として、執行文の必要枚数に300円を掛けた金額の収入印紙を添付します。
    • 債務名義正本の交付手数料として、債務名義の枚数に150円を掛けた金額の収入印紙を添付します。例えば、債務名義の枚数が10枚の場合は、10枚×150円=1500円分を添付します(全10枚の債務名義を2通交付の場合は、20枚×150円=3000円)。
  • 切手・・・84円×被告の数
    • 執行文が数通付与されることは、裁判所から被告に通知されます(送達申請不要)。
  • 更正決定がなされている場合は、更正決定正本も添付します。
  • 申請人が法人の場合で、代表者が債務名義の表示と異なる場合には,資格証明書(商業登記簿謄本)の添付が必要になります。

執行文の再度付与申請書

すでに強制執行の申立てをしているものの、債権者の請求している債権額が大きく、申立中の強制執行だけでは完全な弁済・満足が受けられないため、新たに別の財産に対して強制執行の申立てをする場合は、執行文の再度付与申請をすることができます(民事執行法第28条1項)。

既に強制執行の申立てをしており、これからさらに別の申立てを行う場合に申請します。

強制執行申立中なので、債務名義正本は手元にありません!

なお、執行文を数通付与・再度付与した場合には、執行文付与に対する異議申立等の機会を保障するため、債務者に対し、執行文を付与した旨と執行文の通数を通知しなければならないとされています(民事執行規則第19条)。

債務者への通知は裁判所書記官が職権で行いますので、承継執行文付与や条件成就執行文付与の場合とは異なり、こちらから送達申請をする必要はありません。

執行文再度付与申請書

執行文再度付与申請書
  • 提出先は、当該事件記録を保管している裁判所です。
    • 事件記録は、裁判が確定した場合、第一審裁判所で保管することになっているため、通常、一審裁判所へ申請をします。
    • 控訴中などのため、事件記録が上級裁判所に系属している場合は、その上級裁判所へ申請します。
  • 債務名義使用中証明書の原本を添付します。
  • 手数料
    • 執行文付与の手数料として収入印紙300円
    • 債務名義正本の交付手数料として、債務名義の枚数に150円を掛けた金額の収入印紙を添付します。例えば、債務名義の枚数が10枚の場合は、10枚×150円=1500円分を添付します。
  • 切手・・・84円×被告の数
    • 執行文が再度付与されることは、裁判所から被告に通知されます(送達申請不要)。
  • この申請書を裁判所に提出すると、新しく執行文が綴られた債務名義正本が作成されて、「執行力のある債務名義」として交付されます。
  • 更正決定がなされている場合は、更正決定正本も添付します。
  • 申請人が法人の場合で、代表者が債務名義の表示と異なる場合には、資格証明書(商業登記簿謄本)の添付が必要になります。

債務名義使用中証明書

執行文再度付与の申請をする前に、債務名義を使用中であることの証明書を取得する必要があります

提出先は、債務名義を使用中の裁判所(この書式見本では、令和3年(ル)第○号債権差押命令申立事件が係属している裁判所)です。

りか

通常、執行分付与申請を行う裁判所とは違いますので注意してください。

債務名義使用中証明申請書

債務名義使用中証明申請書
1枚目
債務名義使用中証明申請書
2枚目
  • 証明書発行手数料として収入印紙150円を添付します。
  • この書式のとおり、2枚とも裁判所に提出すると、1枚目の空欄に証明印が押印され、証明書として交付されます。

執行文の再度付与申請(遺失による)

執行文を付与されていた債務名義が焼失したり、紛失したりした場合には、消防署の罹災証明書や警察署の遺失届受理証明書等を添付して執行文の再度付与申請をすることができます。

なお、執行文を数通付与・再度付与した場合には、執行文付与に対する異議申立等の機会を保障するため、債務者に対し、執行文を付与した旨と執行文の通数を通知しなければならないとされています(民事執行規則第19条)。

債務者への通知は裁判所書記官が職権で行いますので、承継執行文付与や条件成就執行文付与の場合とは異なり、こちらから送達申請をする必要はありません。

この手続きは、すでに執行文を付与されていた債務名義を紛失した場合のものです。執行文を付与されていない債務名義正本を紛失した場合の再交付申請手続きとは異なります。(債務名義正本再交付申請手続きはこちら

執行文の再度付与申請書(遺失)

遺失による執行文再度付与申請書
  • 提出先は、当該事件記録を保管している裁判所です。
    • 事件記録は、裁判が確定した場合、第一審裁判所で保管することになっているため、通常、一審裁判所へ申請をします。
    • 控訴中などのため、事件記録が上級裁判所に系属している場合は、その上級裁判所へ申請します。
  • 警察署の遺失届受理証明書や消防署の罹災証明書等の原本を添付します。
  • 手数料
    • 執行文付与の手数料として、収入印紙300円
    • 債務名義正本の交付手数料として、債務名義の枚数に150円を掛けた金額の収入印紙を添付します。
      • 例えば、債務名義の枚数が10枚の場合は、10枚×150円=1500円分を添付します。
      • 債務名義正本のコピーすら手元になく、何枚だったのかが分からない場合は、事件記録を保管している裁判所に問い合わせしましょう。債務名義の枚数について教えてもらえます。
  • 切手・・・84円×被告の数
    • 執行文が再度付与されることは、裁判所から被告に通知されます(送達申請不要)。
  • この申請書を裁判所に提出すると、新しく執行文が綴られた債務名義正本が作成されて、「執行力のある債務名義」として交付されます。
  • 更正決定がなされている場合は、更正決定正本も添付します。
  • 申請人が法人の場合で、代表者が債務名義の表示と異なる場合には、資格証明書(商業登記簿謄本)の添付が必要になります。

こんなときはどうする?

各種証明書申請などの際の、ちょっとした困りごとに対する解決策を伝授します。

判決正本を紛失してしまった場合

いざ、強制執行手続きに着手しようというときに、判決の正本がどこにも見当たらない・・・。

判決から何年も経過していて、判決正本を原告であるご本人が保管していた場合には、いつの間にか行方がわからなくなってしまっていることもあります。

りか

「判決正本の紛失」というと、なんだか取り返しの付かない事態のように聞こえるかもしれませんが、裁判所に申請して再交付してもらうことができますので、大丈夫ですよ!

債務名義等正本交付申請書

判決正本交付申請書
判決正本再交付申請書
  • 提出先は、当該事件記録を保管している裁判所です。
    • 事件記録は、裁判が確定した場合、第一審裁判所で保管することになっているため、通常、一審裁判所へ申請をします。
    • 控訴中などのため、事件記録が上級裁判所に系属している場合は、その上級裁判所へ申請します。
  • 手数料として、債務名義の枚数に150円を掛けた金額の収入印紙を添付します。
    • 例えば、債務名義の枚数が10枚の場合は、10枚×150円=1500円分を添付します。
    • 債務名義正本のコピーすら手元になく、何枚だったのかが分からない場合は、事件記録を保管している裁判所に問い合わせましょう。債務名義の枚数について教えてもらえます。
  • 遺失による執行文再交付の場合とは異なり、債務名義等正本再交付申請には警察署の遺失届受理証明書は不要です。

強制執行からの代理人である場合

本案事件(債務名義を取得した訴訟)は原告である依頼者が自分で訴訟を行っていた、他の弁護士が代理人であったなど、本案事件では訴訟代理人ではなかったけれども、様々な事情により、強制執行からの代理人として委任を受けるケースがあります。

このケースでは、ここまで見てきた各種証明書や執行文付与を申請する際に、その申請のための委任状が必要です。

受任の際に、強制執行手続のための委任状を書いてもらっていますよね。その委任状ではだめなのですか?
あれ?そもそも、普通は証明書申請等の際に委任状を添付することはないですよね・・・なんだか混乱してきました。

りか

受任の際の委任状は、あくまでも強制執行手続のためのものです。
普段、証明書申請等の際に委任状を添付していないのは、その事件の訴訟代理人の地位をもって申請を行っていたからです(訴状と一緒に委任状を提出しているので、裁判所確認済みのため)。
強制執行からの代理人になるケースでは、訴訟の時には代理人ではなかったので、訴訟代理人として申請することができません。そこで、証明書申請の代理人として依頼者からの委任を受ける必要があるのです。

委任状記載例

第1 事  件
 1 相 手 方 千葉 花子
 2 裁 判 所 東京地方裁判所
 3 事   件 令和3年(ワ)第〇〇号 損害賠償請求事件

第2 委任事項
 1 上記事件の判決確定証明申請、判決正本送達証明申請および執行文付与

  申請に関する一切の件

  • 訴訟委任状の事件欄に、証明書や執行文の付与を必要とする事件名(本案事件のもの)を記入します。

委任状の基本についておさらいしたい場合はこちら

おわりに 

以上、不動産強制競売や債権差押命令申立などの強制執行手続きを行う際に必要な書類の申請手続きについて解説しました。

強制執行の申立ては、時にスピードが求められるものです。時間のロスがないように、段取りを組んで迅速に準備をしましょう。

りか

今日も笑顔でがんばりましょう!

   

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