訴状の送達と、訴状を法人代表者の自宅に再送達してもらう場合の上申書の書き方を解説していきます。
記事の後半では、相手方現住所の調査方法についても解説しています。
訴状の送達
裁判所に訴状を提出しただけでは、訴訟は開始されません。裁判所から、訴状の副本が被告に送達される必要があります(民事訴訟法第138条1項)。
裁判所から被告への送達は、「特別送達」という方法で行われます。「特別送達」とは、送達を受けるべき者に、送達すべき書類を対面で交付し、その送達の事実を証明する、特殊取扱の郵便物のことを言います。
普通郵便とは異なり、ポストに投函して送達完了とはなりません。
そのため、下記の理由等により、被告が訴状を受け取らなければ、いつまで経っても訴訟を開始できないことになります。
- 被告の住所・居所・勤務先が分からない
- 被告が居留守を使って訴状を受け取らない
- 被告の勤務時間が不規則で配達のタイミングが合わない
原告側としては、様々な方法を検討して、なんとか被告が訴状を受け取るようにしなければなりません。
訴状の再送達
被告の住所・居所・勤務先が分かっている場合は、以下の方法で訴状の再送達をします。いずれも、裁判所に上申書を提出して行います。
休日送達や曜日指定送達
平日に送達をしても被告に届かない場合は、被告が在宅する可能性が高い曜日を指定することが可能です。
法人代表者の自宅住所宛の送達
法人が被告の場合で事務所・営業所に送達できない場合、法人代表者の自宅住所宛の送達が可能です。
次項でこの場合の上申書の書き方を解説しています。
就業先送達(民事訴訟法103条1項)
原則として、送達は被告の住所や居所に行います。しかし、住所や居所に送達をしても被告に届かない場合や、住所・居所が不明でも勤務先だけは判明している場合は、就業場所送達として勤務先への送達が認められることがあります。
付郵便・公示送達
これまでに見てきた方法で送達ができない場合には、以下で挙げる制度の利用を検討します。
「付郵便」、「公示送達」ともに、被告が実際に書類を受け取ったかどうかは関係なく、法律上受け取った場合と同様の効果が発生することになりますので、制度を利用するにあたっては、厳しい条件があります。
付郵便(民事訴訟法107条)
被告の住所・居所は判明しているが、それらの場所に送達をしても被告に届かない場合(居留守を使っているなど)に、訴状を書留郵便で送付し、発送をした段階で送達があったものとする制度です。
この制度を利用するためには、現地調査を行い、被告が、送達を試みる住所に実際に住んでいることを証明する必要があります。
公示送達(民事訴訟法110条~113条)
調査をしても、被告の住所・居所・勤務先が分からない場合は、「公示送達」といって、裁判所の掲示板に被告に宛てて呼出状を掲示し、2週間経過した時点で訴状が送達されたものとする制度を利用することができます。
この制度を利用するためには、入念に調査を行ったけれども、被告の所在を突き止めることができなかったということを証明する必要があります。
法人代表者の自宅住所宛再送達の上申書
法人が被告の場合で事務所・営業所に送達できない場合、法人代表者の自宅住所宛の送達も可能です。その場合の上申書の書き方です。
再送達の上申書(法人代表者の自宅住所宛)
- 添付するのは、戸籍の附票ではなく住民票でも大丈夫です。
- 戸籍附票または住民票は、原本を提出します。
添付書類は原本を提出しますので、FAXの利用はできません。裁判所に直接持参するか、遠方の場合は郵送で提出します。
相手方の住所を調べる方法
相手方が行方不明になっている場合でも、過去の住所が判明していれば、現在の住所を突き止めることは可能です。
過去の住所(居所ではなく、住民票上の住所)がひとつも分からない場合は、残念ながら、ここで解説している方法で現住所を突き止めることはできません。
判明している過去の住所について、住民票の除票を取得します。
その際に、本籍と続柄の表示をしてもらうようにします。
なお、住民基本台帳法の改正(令和元年6月20日施行)に伴い、平成26年6月20日以降に消除又は改製された住民票の除票の保存期間が、5年から150年間に延長されました。ただし、平成26年6月19日以前に除票となったものについては、既に保存期間を経過し廃棄されているため、交付を受けることができません。
つまり、判明している過去の住所が、平成26年6月19日以前のものである場合は、住民票除票が破棄されているため、それを利用して現在の住所を突き止めることもできません。
住民票除票に記載されている戸籍の謄本を取得します。
この「STEP2」は省略も可能なのですが、稀に、転籍や婚姻による新戸籍作成などによって、住民票除票記載の戸籍には属さなくなっている場合があるため、念のために取得することをお勧めします。
その場合は、取得した戸籍(または除籍)謄本に転籍先等が記載されています。
本籍地の自治体に対して、戸籍の附票を申請します。
戸籍の附票とは、その戸籍が作られてから(またはその戸籍に入籍してから)の住所の異動が記録されたものです。したがって、戸籍の附票を取得すれば、現住所も記載されています。
戸籍の附票は、抄本(必要な個人の部分のみが記載されているもの)だけで足ります。
相手方が、現住所に住民異動手続きをしていない場合(=居所と住民票上の住所が一致しない場合)は、この方法で現住所を突き止めることはできません。
現住所を証明する書類としては、戸籍の附票で足ります。
弁護士に確認をして、住民票も必要であるとの指示があった場合は、住民票も取得しましょう。
おわりに
以上、訴状の送達と、訴状を法人代表者の自宅に再送達してもらう場合の上申書の書き方について解説しました。
今日も笑顔でがんばりましょう!