民事保全のなかでも、特に不動産仮差押命令申立手続きの一連の流れを具体的に解説していきます。
民事保全には、不動産仮差押のほかにも、目的とする財産に応じて、債権仮差押や動産仮差押などがあります。
不動産仮差押とは
不動産の差押というと、債務者の所有不動産を競売にかけて債権を回収することですよね?では、「仮差押」は何が違うのでしょうか?「仮」とはどういうことなのでしょうか?
不動産の差押による競売は、強制執行のひとつですが、強制執行は、債務名義を有していないと行うことが出来ません。
では、債権を回収したいけれども債務名義を有していない場合は、まずは裁判を起こして債務名義(勝訴判決)を得て、それが確定してから強制執行としての不動産差押と競売手続をすればいいのですね。
そのとおりですが、訴訟提起から判決までは時間がかかりますよね?その間に債務者が不動産を処分(任意売却)してしまったらどうしますか?
あっ、そうなってしまっては困りますね。どうしたらいいんでしょうか?
そこで、「仮差押」手続をするのです。
不動産仮差押は、債務者の所有する不動産に対して、裁判所の仮差押命令に基づき仮差押の登記がなされることにより行われます。
債務者が自発的に返済をしない場合において、強制執行を見越して裁判を起こし、債務名義を手に入れた(勝訴判決が下りた)としても、債務者に財産がなければ債権を回収することができず、意味がありません。その判決は絵に描いた餅になってしまいます。
確実に債権を回収するためには、訴訟を提起する前(あるいは、訴訟中)に、あらかじめ相手方の財産を押さえておく必要があります。
このように、なんらかの金銭債権がある場合に、その債権による将来の強制執行を保全するために、債権者は、債務者の財産を仮に差し押さえること(=民事保全)が認められています。
第二十条 仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
2 仮差押命令は、前項の債権が条件付又は期限付である場合においても、これを発することができる。
出典:e-Govポータル 民事保全法第20条
民事保全には、不動産仮差押のほかにも、目的とする財産に応じて、債権仮差押や動産仮差押などがあります。
仮差押の要件
仮差押命令は、債権者からの一方的な申立によって、裁判所が決定するという形式で迅速に発令されます。
早急に、また、債務者に知られないように保全措置を執らないと、債務者が財産を処分したり隠匿したりする危険性があるので、原則として債務者には裁判所から通知・連絡をしないで審理が行われます。
このため、特に必要性が認められる場合でなければ仮差押命令は出されず、また、仮差押が認められるためには以下の要件を満たさなければなりません。
被保全債権の存在
大前提として、保全されるべき債権の存在が疎明される必要があります。
「保全されるべき債権」とは、債権者が将来の強制執行によって回収しようとしている債権のことです。例えば、貸金債権の場合は、借用証書で疎明を行います。
保全の必要性
仮差押によって執行の保全をしておかないと、将来、本案の裁判によって債務名義(勝訴判決)を得たとしても、執行不能となるおそれが強いという事情を疎明する必要があります。
具体的には、債務者の経済状況が悪化していて、不動産を処分するおそれがある等です。
担保の提供
仮差押命令申立は、債権者の一方的な申立であるため、債務者に不測の損害を与える可能性があります。そこで、仮差押命令発令の前提として、裁判所の命ずる担保(=保証金)の提供が要求されます。
万が一、仮差押申立手続に誤りがあって、債務者に損害が生じた場合に、その損害を保証することができるようにするためです。
不動産仮差押申立の流れ
不動産仮差押申立は、以下の流れで進んでいきます。
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依頼者との打ち合わせ・調査・必要書類の取り寄せ
民事保全は、実務面において私たちパラリーガルの関与する部分が非常に多い手続です。迅速で正確な事務処理が求められますので、最初の段階から、手続全体を見越した準備をしておく必要があります。
必要書類の準備
依頼者に準備(記入)いただくもの
- 民事保全事件用の委任状
- 供託用の委任状(担保を立てる際に代理人として供託する場合)
- 供託用と、将来の取戻請求用の2通が必要です。
- 以下の収入印紙・切手代金を実費代として依頼者から預かります。
- 保全命令申立手数料2,000円
- 郵便切手代金
- 裁判所から、債務者と法務局へ送達するための費用です。
- 裁判所によって必要とされる金種・枚数は異なりますので、事前に問い合わせましょう。
- 登録免許税用の収入印紙
- 請求債権額×4/1,000円(ただし、請求債権額の1,000円未満を切り捨てて、1,000分の4を乗じた額から、100円未満を切り捨てた額)
- 上記額が1,000円未満の場合は1,000円
事務所で準備するもの
- 資格証明書(交付から3ヵ月以内のもの)
- 当事者が法人の場合は、全部事項証明書。
- 債権者が法人で、担保を供託で立てる場合は、債権者の資格証明書は供託用にもう1通必要です(供託時に法務局で取得するという方法でも大丈夫です。)。
- 不動産の全部事項証明書(交付から1ヵ月以内のもの)
- 固定資産評価証明書(最新のもの)
- 申立書【記載例(東京地裁書式見本PDF)】
- 作成は弁護士ですが、目録等に記載ミスがないかしっかりチェックしましょう。
- ページ数を記載した場合は、契印は不要です。
- 裁判所用の正本1通のみを提出します(債務者には送達されません。)。
- 当事者目録(立担保証明時提出用)
- 債権者数+債務者数+1+滞納処分庁数
- 申立書に添付したものを使用しますが、ページ数は入れません。
- 請求債権目録(立担保証明時提出用)
- 債権者数+債務者数+1
- 申立書に添付したものを使用しますが、ページ数は入れません。
- 物件目録(立担保証明時提出用)
- 債権者数+債務者数+1+法務局数+滞納処分庁数
- 申立書に添付したものを使用しますが、ページ数は入れません。
- 登記権利者・義務者目録 【記載例 (東京地裁書式見本PDF) 】
- 法務局数
- 仮差押登記用の目録です。立担保証明時に提出します。
その他の準備・確認事項等
- 担保額について試算し、裁判所の決定が下りた際にすぐに準備ができるかどうかを依頼者に確認しておきます。
- 担保の額については、不動産仮差押では目的物の価格(固定資産評価証明書記載の評価額)の10%~30%程度になることが多いですが、裁判所によっても異なり、かつ、具体的な事案に応じて定められます。
- 申立前に、担保額について完全に把握することは不可能ですが、担保の提供が出来ない場合には、保全申立は却下されてしまいますので、あらかじめ十分な額を準備する必要があります。
- 法テラスを利用する場合は、申し込みをして援助決定を受けておきます。
供託用の委任状
担保を供託で立てる場合に、弁護士が代理人として手続をおこなうときは、裁判所用の委任状とは別に、供託用の委任状が必要です。
担保額が決定してからの準備でも構いませんが、できれば最初に準備をしておいた方があとで慌てなくて済みます。
供託用委任状
取戻請求用の委任状
裁判所用の委任状についてはこちら
固定資産評価証明書
固定資産評価証明書の申請は、日弁連の統一書式を利用して行います。
書式のダウンロードはこちら
固定資産評価証明書交付申請書(弁護士会統一用紙)
申請書と一緒に持参するものなど
- 所属弁護士会発行の身分証明書
- 自分の運転免許証等・認印
- 弁護士からパラリーガルあての委任状
- そのほか、必須ではありませんが、念のために持参しておくと安心なもの
- 依頼者の委任状(仮差押申立用)
- 仮差押申立書の写し
※申請先によっては、パラリーガル個人の記載や身分証明書は不要な場合もあると思われます(当地ではこの扱いですので長年この書式で申請を行っています。)。
- 遠隔地に郵送で申請する場合は、所属弁護士会発行の弁護士証明書を添付します。
- 申請先によって対応は異なります。申請書を発送した後で、不足するものがある場合は後から提出すれば大丈夫ですが、急ぎの場合は事前に電話で必要書類について問い合わせをしましょう。
弁護士からパラリーガルへの委任状
仮差押申立から担保決定まで
不動産仮差押命令申立書の提出
前項で準備した書類は、申立時に全部を提出するわけではありません。
申立時に提出するのは、以下の書類だけです。なお、残りの書類は、立担保の証明時に提出します。
裁判所に提出する書類等
- 申立書
- 作成は弁護士ですが、目録等に記載ミスがないかしっかりチェックしましょう。
- 裁判所用の正本1通のみを提出します(債務者には送達されません。)。
- 申立手数料(収入印紙)
- 原則1件につき2,000円
- 債権者・債務者が複数の場合や、事案によって印紙額は異なります。事前に裁判所に問い合わせましょう。
- 委任状
- 資格証明書(交付から3か月以内のもの)
- 当事者が法人の場合は、全部事項証明書を提出します。
- 不動産登記事項証明書(全部証明)(交付から1か月以内のもの)
- 固定資産評価証明書(最新のもの)
- 証拠(疎明資料)の写し
- 例:契約書、内容証明郵便、陳述書等
- 民事訴訟の際と同様に、「甲1、甲2、…」と番号を付します。
- 裁判所用の正本1通のみを提出します(債務者には送達されません。)。
- その他
- 支払保証委託契約による担保提供の場合
- 立担保許可申請書2通
- 当事者の現住所や名称が、契約書等と異なる場合
- 住民票、履歴事項全部証明書等、契約時から現在までのつながりが分かる資料
- 連帯保証人を債務者とする場合
- 主債務者の住所又は本店所在地の土地建物の不動産登記事項証明書(交付から1か月以内のもの)
- なお、上記不動産が主債務者所有の場合、当該物件の固定資産評価証明書(最新のもの)も必要です。
- 土地又は建物のみの不動産仮差押申立てをする場合
- その土地上の建物又は建物の底地の不動産登記事項証明書と固定資産評価証明書(最新のもの)
- 滞納処分庁がある場合
- 通知用の郵便切手 84円×滞納処分庁数
- 支払保証委託契約による担保提供の場合
管轄裁判所
申立書の提出先となる管轄裁判所は、以下のどちらかから選択します。
- 本案事件を管轄する裁判所
- 目的物(係争物)の所在地を管轄する裁判所
民事保全は専属管轄ですが(民事保全法第6条)、本案に合意管轄がある場合は、本案事件の管轄裁判所として管轄が生じます。
つまり、将来、本案事件を提起することができる裁判所であればどこでも仮差押申立を行うことができます。
裁判官との面接
裁判所において申立書のチェック(補正・追完指示など)が行われたあと、債権者本人または代理人弁護士(ときには両者の出席が必要な場合もあります。)と裁判官との面接が行われます。
なお、不動産仮差押命令申立事件では、債務者審尋は行われません。
この面接は、申立の翌日など、かなり早い段階で行われます。裁判所から面接日時の打診の電話がありますので、あらかじめ弁護士の予定を空けるようにしておく、すぐに弁護士と連絡が取れるようにしておくなどしましょう。
申立書や目録の補正を指示された場合は、訴状訂正と同様の要領(訴状訂正申立書に訂正した訴状を添付する方法)で行います。こちらの記事を参考にしてください。
担保の決定
裁判官との面接のあと、仮差押決定を出すのが相当な事案であると判断されると、一定の担保をいつまでに積めば仮差押決定を出す、という「担保決定」が行われます。
担保の提供期間は、裁判所の裁量で決められますが、一般的には3〜5日、大型連休・年末年始にかかる場合でも最長2週間で定められます。
担保の提供
裁判所が定めた担保提供期間内に、供託などの方法によって担保の提供を行います。
担保提供期間内に担保が立てられないときは、保全命令の申立てが却下されます。
正当な事由がある場合には、担保提供期間満了前に担保提供期間延長の許可申請を行い、裁判所が、延長が相当であると認めた場合には担保提供期間が延長されることもあります。
供託による担保提供
供託により担保提供をする場合は、仮差押命令申立をした裁判所の所在地を管轄する法務局に金銭または有価証券を供託します。
法務局が遠方の場合は、裁判所に管轄外供託の許可申請をして、最寄りの法務局で供託ができるようにしましょう。
供託が完了すると、法務局から供託書正本が交付されます。依頼者ご本人に供託を行ってもらった場合は、供託書正本を事務所に届けてもらいます。
以下、代理人として供託する場合の手続についてご説明します。
法務局に持参するもの
- 供託書
- 供託委任状
- 供託する現金
- 依頼者が法人の場合は、資格証明書
- 代表者事項証明書で大丈夫です。
- 所属弁護士会発行の事務員証
- 自分の身分証明書(運転免許証など。念のため持参しましょう。)
※ 被供託者(債務者)が法人の場合、資格証明書は不要です。
供託書の書き方
申請書記入の際の注意事項
- 事前に申請用紙を入手して、事務所で落ち着いて記入をしてから持参しましょう。(仮差押申立準備のために法務局で不動産登記簿を申請する際に、供託課に寄って、申請用紙を2枚もらって帰りましょう。)
- 供託金額はいかなる場合であっても修正はできません(供託規則第6条6項)。
- 当事者(供託者・被供託者)の表示は、不動産仮差押命令申立書添付の当事者目録の表示と同様に記入します。
- 申立後に、裁判所からの指示で氏名・住所を補正している場合には補正後の表示に合わせなければなりませんので、注意が必要です。
- 補正の結果、あらかじめ取り付けていた委任状の表示と異なってしまった場合は、依頼者に委任状を書き直してもらいます。
- 債権者(依頼者)が法人の場合は、代表者の氏名も記入します。
- 見本では、「東京花子」と記入されている欄に会社名(「株式会社〇〇商事」等)を、その下の行に代表者氏名(「代表者代表取締役〇〇」等)と記入します。
- 債務者が法人の場合、会社名だけ記入します。代表者氏名の記入は不要です。
- 法令条項欄は、「民事保全法第14条1項」と記入します。
※供託書は、間違いのないように気を付けて記入し、念には念をいれてチェックをしましょう。
供託官は、供託書の中身までしっかりチェックしてくれるわけではありません。あくまでも、供託書の文面の整合性を見るだけです。記載ミスがあると、裁判所には受け付けてもらえませんが、その場合は、裁判所から「不受理証明書」の交付を受け、再度法務局に出向き、供託書を補正しなければなりません。そして、それからまた裁判所へ供託書を提出するという余計な手間と時間がかかってしまいます。
供託手続の際に、委任状について確認請求を忘れずに行いましょう。
そうすると、供託官が委任状に法務局の認証証明のための印版を押印して、こちらに返却されます。認証証明のあるこの委任状は、印鑑証明書のかわりになります。
後に事件が解決したとき、供託金の取戻請求をすることになりますが、代理人として供託金の取り戻しを受ける場合には、一般的に、取戻用の委任状に依頼者の印鑑証明の添付が必要です。しかし、供託時に確認を受けた委任状を添付することで、印鑑証明書を提出しなくても、代理人として供託金の取戻請求手続を行うことができます。
※出典:法務局
支払保証委託契約による担保提供
支払保証委託契約による担保提供とは、債務者に対し損害賠償の必要が生じた場合に、債権者等の代わりに、支払保証先の銀行等がその支払をするようあらかじめ保証委託をする契約のことです。
通常は、銀行に担保と同額の定期預金を積み、銀行はそれに質権を設定したうえで支払保証委託契約をします。
この方法をとる場合は、申立時に許可申請を行い、裁判所の許可を受けておく必要があります。
法テラスの援助を受けて仮差押申立を行う場合には、この支払保証委託契約による担保提供をすることになります。
(参考)法テラスを利用した際の支払い保証委託契約手続
法テラスから援助開始決定が下りると、次の書類が交付されます。
- 地方事務所長の支払い委託契約等の権限に関する規程
- 地方事務所長の資格証明書
- 立担保許可申請書2通
- 支払保証委託契約書の流れ
申立の際に、法テラスから交付された次の書類もあわせて提出します。
- 地方事務所長の支払い委託契約等の権限に関する規程
- 地方事務所長の資格証明書
- 立担保許可申請書2通
裁判所から口頭で担保決定がなされ、立担保決定許可申請書に許可の押印がされたものが交付されます。
法テラスに、立担保許可申請書と、仮差押申立書(写し)を提出します。
裁判所は、通常3日から5日程度の担保提供期間を定めるところ、法テラスの立担保援助の審査や支払保証委託契約締結には時間を要することがあります。担保決定後はできるだけ早く法テラスへ必要書類を提出しましょう。
法テラスからの立担保援助開始決定が下りたら、法テラスと銀行との間で支払保証委託契約の締結が行われます。
こちらには、支払保証委託契約書(謄本)が交付されますので、事務所控え用のコピーを取って、謄本のほうを裁判所に提出をします。
立担保の証明から保全命令発令、仮差押執行まで
立担保の証明
担保の提供ができたら、裁判所にその疎明資料を提出します。
- 供託書の場合は、原本提出または原本照会のうえコピーを提出します。
- 支払保証委託契約の場合は、銀行等の証明書を提出します。
また、その際に、以下の書類を一緒に提出します。
- 当事者目録
- 債権者数+債務者数+1+滞納処分庁数
- 申立書に添付したものを使用しますが、ページ数は入れません。
- 請求債権目録
- 債権者数+債務者数+1
- 申立書に添付したものを使用しますが、ページ数は入れません。
- 物件目録
- 債権者数+債務者数+1+法務局数+滞納処分庁数
- 申立書に添付したものを使用しますが、ページ数は入れません。
- 登記権利者・義務者目録
- 法務局数
- 郵便切手
- 裁判所から、債務者と法務局へ送達するための費用です。
- 裁判所によって必要とされる金種・枚数は異なりますので、事前に問い合わせましょう。
- 登録免許税用の収入印紙
- 請求債権額×4/1,000円(ただし、請求債権額の1,000円未満を切り捨てて、1,000分の4を乗じた額から、100円未満を切り捨てた額)
- 上記額が1,000円未満の場合は1,000円
保全命令の発令、仮差押決定正本の交付
供託書等を提出すると、裁判所が担保提供の事実を確認して、保全命令の発令がなされます。
そして、裁判所から仮差押決定正本が交付されます。
裁判所から電話連絡がありますので、正本を受け取りにいきましょう。その際、受書の提出が必要です。
保全命令正本受領書
仮差押の執行
保全命令が発令されただけでは、民事保全事件は終了しません。保全の執行が必要です。
執行期間には制限があり、債権者に対して命令が送達された日から2週間以内に執行に着手しなければなりません(民事保全法第43条)。
不動産仮差押命令申立事件では、裁判所書記官がそのまま保全の執行まで行いますので、債権者側での手続は特に必要ありません。
具体的には、裁判所書記官から法務局に登記嘱託書が郵送され、債務者の所有する不動産に対して仮差押の登記がなされます(民事保全法第47条)。
債務者への通知
保全命令が発令されると、債務者にも決定正本が送達されます。
債務者あての決定正本の発送は、少し時間を置いて行われます(例えば、東京地裁では、保全決定日の翌日から起算して,1週間後に発送されます。)ので、債務者が決定正本を受け取るのは、債権者への交付日から約1週間後になります。
債務者が決定正本を受け取る頃には、仮差押登記が完了しています!
なお、保全執行の都合で、債務者への発送日延期を希望する場合は、送達延期の上申書を提出します。
送達延期の上申書
債務者の対抗手段
債務者は、保全命令に対する不服申立てをすることができます。
保全命令に対する不服申立てには、保全命令の発令裁判所が担当する保全異議(民事保全法第26条)と保全取消し(民事保全法37条)があり、その決定に対する不服申立てとして保全抗告があります。
おわりに
以上、不動産仮差押命令申立の一連の流れについて解説しました。
民事保全手続きでは、迅速で正確な事務処理が求められます。最初の段階から、手続全体を見越して準備をするように心掛けましょう。
今日も笑顔でがんばりましょう!