再生計画認可決定が確定した後にすべきことについて解説していきます。

個人再生申立からここまで、なんとか無事に到達しました。もう一息で手続き全てが完了します。
再生計画認可決定の確定とは
再生計画認可決定の確定
再生計画認可決定の確定をもって、再生手続きは終了します(民事再生法第233条、244条。)。
認可決定の確定は、認可決定が官報に掲載され、公告されてから2週間の経過により確定します。
再生手続きに関する裁判につき利害関係を有する者は、この法律に特別の定めがある場合に限り、当該裁判に対し即時抗告をすることができる。その期間は、裁判の公告があった場合には、その公告が効力を生じた日から起算して二週間とする。
出典:e-Govポータル 民事再生法第9条
返済開始はいつになる?
返済の開始日は、「再生計画の認可決定が確定した日が属する月の翌月」です。



確定から返済開始まで1ヵ月ほどありますが、それまでに準備しなければならないことが色々あります。次項から具体的な手続きについて見ていきましょう。
再生計画認可決定が確定した後の手続き



それでは、確定後の手続きについて順番にご説明します。
裁判所に、再生計画認可決定確定証明申請書を提出します。
再生計画認可決定確定証明申請書




※このほかに、証明書発行手数料として収入印紙150円を添付します。
この書式のとおり、2枚とも裁判所に提出すると、1枚目の空欄に証明印が押印され、確定証明書として交付されます。
住宅ローン債権者と別除権協定の債権者以外の債権者に通知をして、それぞれの振込先を連絡してもらいます。
再生計画認可決定確定通知書


※この通知書には、再生計画認可決定確定証明書の写しを添付します。



債権者が金融業者ではない場合(個人など)、なかなか回答をもらえないことがあります。そこで、金融業者ではない債権者には、「振込先指定書」も添付しておくと、スムーズに回答を得ることができます。
※できれば、事務所住所を記載して切手を貼付した返信用封筒も同封するとなお良いと思います。
振込先指定書


全ての債権者から振込先の回答が得られたら、それらをまとめて分かりやすい一覧表などを作成します。
今後の返済は依頼者ご本人が行いますので、返済日時や金額を間違えることのないように、返済予定表なども作成しましょう。
さらに、通常は委任関係も認可決定確定をもって終了しますので、将来的に債権者に連絡をとる必要が生じた場合も、依頼者ご本人が行うことになります。したがって、各債権者の連絡先もまとめてお渡ししましょう。
最後の打ち合わせにてこちらから依頼者にお渡しするものをまとめると、主に以下のとおりです。
- 返済予定表
- 振込先一覧表
- 各債権者の連絡先一覧表
- 開始決定や認可決定などの正本
- 給与明細書など、お預かりしていた書類の原本類
認可決定確定をもって委任関係が終了する場合は、依頼者にその旨を明確に説明しましょう。今後は依頼者本人に自己の責任で返済を行ってもらうことをきちんと理解してもらわなければ、後に思わぬトラブルに発展する可能性があります。
給与の差押えを受けていた場合は
依頼者が個人再生申立時に給与の差押えを受けており、差押中止手続きをしていた場合は、留保されていた給与を受け取るための手続きが必要です。
再生計画認可決定確定により、強制執行手続きが失効した旨の上申書を、執行裁判所に提出します。
強制執行失効の上申書


添付書類として、以下の書類等を合わせて提出します。
- 再生計画認可決定正本(原本照合のあと、返却されます。)
- 再生計画認可決定正本の写し
- 再生計画認可決定確定証明書正本
- 特別送達料金分の切手(執行裁判所から、債権者への特別送達用の切手です。)
- 84円切手×1枚(執行裁判所から、第三債務者への通知用の切手です。)
特別送達料金とは、一般書留料金(435円) + 特別送達料金(570円) + 基本料金 です。



よって、基本料金が84円(郵便物の重さが25グラムまで)の場合は、1089円になります。※令和5年5月現在
強制執行失効の上申書を提出すると、裁判所から債権差押命令申立事件の取消決定がなされ、取消決定の正本が交付されます。
この取消決定正本は、債権者および第三債務者にも送達されます。
裁判所の取消決定に対して、一定の期間内に債権者からの即時抗告(異議申立)がなければ、取消決定が確定します。



債権者の異議申立期間は、決定正本を受け取ってから1週間です。
管理人は、この取消決定には即時抗告ができない(=取消決定後、すぐに受取手続きに移行できる。)と理解していたのですが、令和3年8月に手続きを行ったところ、即時抗告期間を経て確定の取り扱いでした。
取消決定が確定したので、これまでに留保されていた給与を受け取ることができます。
勤務先会社で保管されていた場合
執行裁判所から勤務先会社に、決定正本が届きます。債務者ご本人から会社に問い合わせて受け取りの手続きをしてもらいます。
法務局に供託されていた場合
① 執行裁判所に下記の2枚の書類を提出し、供託金受取のための証明書を取り付けます。
供託金交付上申書・受書




このほか、印鑑証明書と実印、裁判所から法務局への通知用郵券が必要になります。必要な郵券の種類等については係属裁判所にお問い合わせください。
② 法務局に供託金払渡請求書と裁判所から受け取った証明書を提出します。
供託金支払請求書の用紙は、こちらからダウンロードできます。
具体的な記入方法は以下のとおりです。
供託金払渡請求書


このほか、法務局には、以下の書類等を持参していただきます。
- 運転免許証またはマイナンマーカードの原本とその写し
- 印鑑証明書・実印(運転免許証またはマイナンバーカードがない場合)
- 振込先を希望する銀行等の通帳(請求書提出時に再度確認するためです。)
住宅ローンの返済条件を変更する場合
住宅ローンについてリスケジュールをする場合、住宅ローン債権者から、実際の変更契約は再生計画認可決定が確定してからではないと行うことが出来ないと言われるケースがあります。
この場合は、住宅ローン債権者に以下の書類を郵送し、債権者からの指示に従って変更契約を行いましょう。
- 再生計画認可決定確定証明書(写し)
- 再生計画表
- 現在の経済状況を示す書類(過去2~3ヵ月の家計表と給与明細等)
※上記は一例ですので、必要な書類等や手続きについては住宅ローン債権者にお問い合わせ下さい。
おわりに
以上、再生計画認可決定が確定した後にすべきことについて解説しました。
これで個人再生手続きは全て終了しましたが、申立から認可決定確定に到達するまでは、困難なことも多かったと思います。



本当にお疲れ様でした!