個人再生手続きにおける、財産目録の作成方法と添付書類について解説します。

個人再生手続きにおける、財産目録の作成方法と、財産目録に添付しなければならない書類について解説していきます。

りか

財産目録は、個人再生申立をする場合に必ず提出しなければならない書類です。今回は、その作成方法と添付書類についてご説明します。

管理人の事務所所在地の管轄裁判所では、財産目録は申立時と再生計画案提出時の2回作成する運用です。この記事では、申立時の財産目録作成についてご説明しています(2回とも、作成要領は同じです。異なるのは、基準とする日付です。)。

目次

財産目録作成にあたっての準備事項

財産目録は、小規模個人・給与所得者等のどちらを選択する場合でも、個人再生申立を行う際に必ず提出しなければならない書類です。そして、この財産目録を基にして、「清算価値算出シート」という書類を作成し、提出することが必須とされています。

清算価値算出シートの作成方法についてはこちら

財産目録を作成するために、依頼者から下記の書類を提出してもらいます。

基本的に、下記の書類は依頼者本人から各関係機関に請求・収集してもらう必要がありますので、請求先や請求方法についてしっかり説明をして迅速に提出してもらうようにしましょう。

※ なお、裁判所によっては必要とされる書類は多少異なることがあります。管轄裁判所の運用をご確認下さい。

スクロールできます
必要書類注意事項その他
依頼者名義の預金通帳2年分必要。紛失や合算記帳がある場合は取引明細書を提出。裁判所には写しを提出
未成年の子供名義の預金通帳2年分必要。紛失や合算記帳がある場合は取引明細書を提出。
依頼者の収入からの預金ではないことが明白な場合は不要。
裁判所には写しを提出
貸付金・過払金・売掛金を証明する書類貸付金の場合は契約書、過払金の場合は過払金計算書、売掛金の場合はそれを証明する書類。和解済みの場合は和解書を提出。裁判所には写しを提出
積立金額を証明する書類申立時点での積立残高を証明する書類。社内積立、デパート友の会、確定拠出年金その他の年金・共済等。裁判所には写しを提出
退職金見込額証明書勤続5年以上の場合。退職金規程によって自己計算できる場合は、退職金規程を提出。裁判所には写しを提出
保険証書依頼者が契約者になっている保険全て。裁判所には写しを提出
保険解約返戻金証明書保険証書に解約金がないことが明記されていない場合は、返戻金0円でも必要。裁判所には写しを提出
有価証券に関する書類証券会社の残高証明書など。
持株の場合は、保有株数を証明する書類と、時価を証明する書類(新聞株価欄で良い)。
裁判所には写しを提出
車両の車検証等依頼者が所有者または使用者になっている車両全て。裁判所には写しを提出
車両の査定書初年度契約から7年以内の場合。必ず2社分。裁判所には写しを提出
高価な品物の査定書時価20万円の品物を所有している場合。必ず2社分。裁判所には写しを提出
不動産登記事項証明書依頼者所有の不動産全てについて発行から3ヵ月以内のもの。共同担保目録を記載すること。裁判所には原本を提出
不動産の査定書依頼者所有の不動産全てについて必ず2社分。裁判所には写しを提出
固定資産評価証明書依頼者所有の不動産全てについて最新年度のもの。裁判所には原本を提出
賃貸借契約書・住宅使用許可書賃貸契約書などに敷金の記載がある場合。
申立書添付書類と重複するため、改めて財産目録のための添付は不要。
裁判所には写しを提出
相続に関する書類遺産分割協議書など。遺産分割未了の場合、相続関係図や遺産目録など。
依頼者が相続しているが登記未了の不動産がある場合は、所有不動産と同様の書類を提出。
裁判所には写しを提出
偏頗弁済に関する書類受任通知発送後に一部の債権者に返済をしている場合は、返済した金額が分かる書類を提出。裁判所には写しを提出
依頼者がこの他に資産価値があるものを所有している場合は、それについて時価を証明する書類が必要になります。
りか

依頼者の勤務先が中小企業である場合、退職金見込額証明書の取得が困難なケースがあります(実際、これまでにそのような書類は発行したことがないので書き方がわからないと言われたことがあります)。
そのような場合には、こちらで雛形を作成して、勤務先には、日付・退職金見込額・会社名のみを記入していただくようにすると、スムーズに証明書を得ることができます。

退職金見込額証明書

退職金見込額証明書

財産目録の作成

それでは、依頼者から提出された各資料を確認しながら財産目録を作成していきましょう。

小規模個人・給与所得者等どちらの場合でも記入方法は同じです。

また、裁判所によって書式が異なる場合がありますが、記入方法はほぼ同じです。

財産目録(個人再生)

個人再生 財産目録
1頁
個人再生 財産目録
2頁
個人再生 財産目録
3頁
個人再生 財産目録
4頁

1 現金

個人再生 財産目録
  • 依頼者が所持している現金の額を記入します。
  • 1円単位でなくても大丈夫です。
  • 家計表の翌月への繰越額と、預貯金残高を確認して、金額に矛盾がないように注意して下さい。
    • 例えば、家計表の繰越額が80,000円、うち預貯金額が1,000円なのに、現金額が2,000円しかないなどの場合は、(計上していない多額の支出があるなど)家計表が間違っている場合があります。

2 預金・貯金

個人再生 財産目録
  • 銀行などに借り入れがあり、相殺で控除される場合は、相殺後の払い戻し見込額を記入します(その結果、マイナスになる場合は0円とします)。
  • できるだけ、申立直前の残高を記入するようにします(申立1週間以内が望ましいと思います)。
    • まずは、他の書類と一緒に通帳一式の写しを取り、その時点での通帳記載金額を記入します。
    • そして、依頼者に完成した申立書の最終確認にお越しいただく際に、直前に記帳した通帳を持参してもらい、金額を修正しましょう。
  • この書式には、「申立前1年分の取引明細を添付すること」とありますが、実際には申立前2年分を求められることがほとんどです。
    • 通帳を紛失している場合や、まとめ記帳がある場合は、依頼者本人から金融機関に明細書発行を請求してもらいます。
  • 再生計画による返済のための積立金の預金通帳も記入します。
  • 基本的に、未成年の子供名義の通帳も申立人の財産になります。
    • 子供が未成年の場合は、申立人の収入からの預金であることが明白であるためです。
りか

管理人の経験では前例がありませんが、申立人の両親から申立人の子供への生前贈与などを預金している場合や、配偶者の収入からの預金であることが明らかである場合は、その通帳が未成年の子供名義であっても財産目録へ記載する必要はないと思います。

3 貸付金・過払金

個人再生 財産目録
  • 金額は、貸付金・過払金の債権額ではなく、回収見込額を記入します。回収の見込みがない場合は、その理由を具体的に記入します。
  • 和解している場合は、和解書の写しも添付します。
  • 貸付金の場合は、契約書などの写しを添付します。
  • 過払金の場合は、状況に応じて以下の書類の写しを添付します。
    • 和解済み ・・・ 和解書
    • 請求中 ・・・ 請求書と過払金計算書
    • 未請求 ・・・ 過払金請求書
  • 売掛金がある場合もこの欄に記入し、売掛金を証明できる書類の写しを添付します。
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貸付金等の回収見込みがない場合、その旨の上申書の提出を求められることがあります。

上申書(貸付金の回収見込みがないこと)

上申書(貸付金の回収見込みがないこと)

4 積立金(社内積立,財形貯蓄等)

個人再生 財産目録
  • ①および②の種類の積立金は、依頼者の給与明細書の控除項目に記載があるはずです。依頼者本人から、勤務先や提携の労働金庫などに残高証明書の請求をしてもらいます。
    • 依頼者本人には、積み立てをしている自覚がない場合があります。給与明細書をしっかりチェックしましょう。
  • ③のように、デパート友の会や、葬祭費用の積立金などがないかも確認しましょう。
  • 積立金を担保にする貸付金がある場合は、それを控除した金額を記入します。
  • 確定拠出年金(iDeCo)等に加入している場合は、現在の積立総額を記載し、証明書等の写しも添付します。
    • なお、確定拠出年金は、財産目録には記載しますが、差押禁止財産なので、清算価値には算入しません(確定拠出年金法32条)。
    • その他、以下の年金等についても同様です。
      • 確定給付企業年金(確定給付企業年金法34条1項)
      • 小規模企業共済(小規模企業共済法15条)
      • 中小企業退職金共済(中小企業退職金共済法20条)

5 退職金

個人再生 財産目録
  • 現在の職場に 5年以上勤務している場合は、退職金の見込額を証明する書類の写しを添付します。
    • 雇用契約書や就業規則などに退職金制度がないことが明記されている場合は、証明書の提出は不要ですが、雇用契約書や就業規則などの写しを添付します。
  • 依頼者が勤務先の従業員貸付制度を利用しており、その借入金の償還方法を退職時一括償還としている場合は、退職金見込額から借入金を相殺した金額で作成してもらいます。
  • 何らかの事情により、証明書の取得ができない場合で、退職金規程によって自己算出が可能な場合は、金額の後ろに括弧書きで計算式を記入します。そして、退職金規定の写しを添付します。

6 保険(生命保険,損害保険,火災保険等)

個人再生 財産目録
  • 依頼者が契約者となっているすべての保険を記入します。
    • 給与明細書や通帳の記載をチェックして、取りこぼしのないように注意しましょう。
    • 依頼者名義の保険の掛け金が、配偶者の通帳から引き落としになっている場合があります。
    • 家計を同じくする家族が加入している保険についてはすべてチェックしましょう。
    • 依頼者が契約者であれば、子供の学資保険も記入対象です。
  • 保険を担保にした貸付金がある場合は、それを控除した金額を記入します。
  • すべての保険について、解約返戻金証明書の写しを添付します。
    • 保険証書に、解約返戻金がないことが明記されている場合は不要です。

7 有価証券等(株式,転換社債,ゴルフ会員権等)

個人再生 財産目録
  • 証券会社などでの取引がある場合は、残高証明書等を添付します。
  • 有価証券等が担保に供されている場合は、時価から被担保債権残額等を控除した金額を記入します。
  • 勤務先会社の持株会に加入している場合があります。
    • 依頼者本人には自覚がないことがあります。給与明細書をチェックしましょう。
    • 持株会の残高証明書の写しを添付します。
    • 時価は、申立日の新聞の株価欄をチェックし、「終値×保有株数」を算出して記入します。そして、申立書には、その新聞の写しも添付します(該当箇所を蛍光マーカーでチェックしておきます)。

8 自動車,二輪車等

個人再生 財産目録
  • 依頼者が所有者または使用者になっている車両はすべて記入します。
  • 親族などの車両を借りて使用している場合は、この財産目録に記入する必要はありません。
    • なお、その場合でも、車検証の写しは申立書添付書類として提出しなければなりません。家計収支表でガソリン代の支出が計上されるため、車両が依頼者の所有ではないことを証明するためです。
  • 車両の種類に応じて、自動車検査証(車検証)などの写しを提出します。
    • 50ccから125ccまでの原付の場合 ・・・ 標識交付証明書
      • 紛失している場合の再発行請求先は、原付のナンバープレートが交付された市区町村です。
    • 125ccから250ccまでの軽二輪の場合 ・・・ 軽自動車届出済証
      • 紛失している場合の再発行請求先は、そのナンバーを管轄する陸運局です。
    • 250cc以上のオートバイの場合 ・・・ 自動車検査証
      • 紛失している場合の再発行請求先は、そのナンバーを管轄する陸運局です。
    • 軽自動車の場合 ・・・ 自動車検査証
      • 紛失している場合の再発行請求先は、そのナンバーを管轄する軽自動車検査協会です。
    • 普通自動車の場合 ・・・ 自動車検査証
      • 紛失している場合の再発行請求先は、そのナンバーを管轄する陸運局です。
りか

バイク・自動車の車検証を紛失していることはまずないと思いますが、原付の標識交付証明書の場合は稀に紛失している場合があります。必ず再発行してもらいましょう。

  • 初年度登録から7年以内の場合は、時価を証明する書類の写しを添付します。
    • 必ず、買取業者など2社から査定を取り、その平均価格を算出して記入します。
    • 初年度登録から7年を経過している場合は、時価は0円と記入し、査定書は不要です。
  • 原則として、所有権が留保されている車両は、申立までにローン債権者に返却しましょう。
    • 債権者からは、返却した車両の引き取り価格を差し引いた、最新の債権調査票を提出してもらいます。
    • 所有権が留保されている場合、車検証の所有者欄にローン債権者の会社名が記載されているはずですが、最近では、車検証には記載されていなくても、所有権留保特約付きの契約を結んでいる場合がありますので、契約書もしっかりチェックしましょう。
  • 事情により、申立までに所有権が留保されている車両を返却できない場合は、査定価格の平均から被担保債権額を差し引いた金額を記入します。
  • 稀なケースですが、ローンで購入した車両でも、所有権の留保がない場合があります(車検証の所有者欄が依頼者の氏名になっており、かつ、所有権留保特約付きの契約ではない。)。この場合は、ローン債権者に車両を返却する必要はありません。

自動車の取り扱いについてはこちら

9 高価な品物(時価20万円以上の品物をいう。)

個人再生 財産目録
  • 時価20万円以上の物品がある場合は、その時価を証明する書類の写しを添付します。
    • 必ず、買取業者など2社から査定を取り、その平均価格を算出して記入します。
  • 原則として、所有権が留保されている場合は、申立までにローン債権者に返却しましょう。
    • 債権者からは、返却した物品の引き取り価格を差し引いた、最新の債権調査票を提出してもらいます。
  • 事情により、申立までに所有権留保がある物品を返却できない場合は、査定価格の平均から被担保債権額を差し引いた金額を記入します。

10 不動産(土地,建物,マンション) 

個人再生 財産目録
  • 自宅だけでなく、田畑や山林など、依頼者が所有する不動産はすべて記入します。
    • すべての不動産について、固定資産評価証明書と登記事項証明書を取得し、どちらも写しではなく原本(取得した証明書そのもの)を添付します。
    • 登記事項証明書は発行から3ヶ月以内のもので、共同担保が設定されている場合は、共同担保目録が記載されたものを取得します。
  • 不動産の時価を証明する書類の写しを添付します。
    • 必ず、不動産業者2社から査定を取り、その平均価格を算出して記入します。
  • 抵当権が設定されている場合は、査定価格の平均から被担保債権額を控除した金額を記入します(その結果、マイナスになる場合は0円とします)。
    • 親族所有の土地の上に住宅を建ており、その土地も住宅ローンの抵当権が設定されている場合は、家と土地の時価の合計から住宅ローンの残債を差し引いて、残った金額を家と土地の時価の割合で比例配分して、家の価格を算出します。
  • 依頼者が相続したものの、相続登記未了の不動産がある場合にも、同様に記入し、登記事項証明書や固定資産評価証明書および不動産業者2社の査定書の提出が必要です(詳細は下記のとおり)。

遺産分割未了の不動産などがある場合は、申立人持分の清算価値を説明する書類を作成して、添付します。

不動産の清算価値について

不動産の清算価値について
りか

この説明書によると、申立人の持分は、土地・建物合わせて3,356,076円の清算価値があることになります。従って、申立人の負債総額が3000万円未満の場合は、最低でも3,356,076円以上を弁済しなければなりません(また、他に清算価値のある財産を所有している場合は、弁済額はさらに増えます。)。

土地・建物の評価額の計算方法

土地・建物それぞれの評価額の計算方法は以下のとおりです。今回、住宅ローン残高に対する土地・建物の按分割合は、査定価格によって算出しています。

住宅ローン残高 13,746,910円
査定価格(不動産業者2社の平均値)
  土地 21,590,000円
  建物 8,160,000円

11 敷金

個人再生 財産目録
  • 賃貸借契約書や住宅使用許可書などに敷金に関する記載がある場合には、必ず記入します。
  • 滞納がある場合は、契約上の返戻金額から滞納額を控除した金額を記入します。

12 相 続 (遺産分割未了の財産も含む。)

個人再生 財産目録
  • 遺産分割協議書や遺言書などの写しを提出します。
  • 遺産分割未了の場合は、相続関係図や遺産目録などの写しを提出します。
  • 依頼者が相続したものの、相続登記未了の不動産がある場合は、「10 不動産」の欄にも記入し、登記事項証明書や固定資産評価証明書および不動産業者2社の査定書の提出が必要です。
りか

管理人の経験では前例がないのですが、遺産分割未了の場合、被相続人や相続人の戸籍・除籍謄本などは裁判所から提出を求められた場合に用意すれば良いのではないかと思います。

13 その他財産

個人再生 財産目録
  • 1〜12までに該当しない財産がある場合は、この欄に記入します。
  • ① 受任通知発送以降に一部の債権者のみに返済を行なっていた場合は、偏頗弁済になりますので、この欄にその金額を記入します。
  • ② 勤務先に債務があり、給与天引きで返済をしている場合、依頼者本人にその自覚がない場合があります。
    • できるだけ早く勤務先にも受任通知を発送し、給与天引きをストップしてもらいます。
    • 受任通知発送後に給与から天引きされていた場合は、偏頗弁済になりますので、この欄にその金額を記入します。
りか

あまりにも偏頗弁済の額が多い場合は、開始決定や再生計画の認可に影響を及ぼします。気を付けましょう。

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おわりに 

以上、個人再生手続きにおける、財産目録の作成方法と、財産目録に添付しなければならない書類について解説しました。

次回は、この財産目録を基にして、清算価値算出シートを作成していきましょう。

りか

今日も笑顔でがんばりましょう!

      

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