再生債権者一覧表の書き方について解説します。

個人再生手続きにおける、債権者一覧表の作成方法について解説していきます。

りか

債権者一覧表の書き方について、事例ごとに具体的にご説明します。

目次

債権者一覧表の作成にあたって

個人再生手続きを申し立てる場合には、申立書のほか、債権者一覧表を提出しなければなりません(民事再生法221条3項、同244条)。

そして、債権者一覧表に記載すべき事柄は、民事再生法(221条3項・4項、244条)および民事再生規則(114条1項、140条)によって規定されています。

りか

民事再生法や民事再生規則には、記載事項が細かく規定されていますが、逐一確認する必要はありません。
管轄裁判所で使用する債権者一覧表の書式に従って記入すれば大丈夫です。

債権者の取りこぼしに注意しましょう。

債権者一覧表を作成するに当たって、なによりも気を付けないといけないことは、債権者を漏らさないようにすることです。

前回の記事でみてきたとおり、債権には様々な種類がありますが、債権者の取りこぼしがあった場合、再生手続開始決定後には申立人から債権者を追加することはできず、書面による決議に付する決定/意見聴取決定後には債権者側からも追完できませんので、取りこぼしていた債権者には、一般弁済期間中に、再生債権に上乗せして支払うことになってしまいます。

債権者のもれがあった場合はどうなるのかについてはこちら

債権者をもらしてしまうと、後で困ったことになるということがわかりましたね!
そうならないために、以下の点を徹底して行いましょう。

  • 依頼者への聞き取りを徹底し、依頼者に届いている債権者からの請求書や裁判所からの訴状などを全て提出してもらう。
  • 依頼者の通帳の記載事項を細かくチェックし、個人間の送金についても確認をする。
  • 債権者かどうか疑わしい相手には、とにかく受任の通知をする。(債権がない場合はないとの回答があります。)

受任の通知をしたけれど、回答自体が返ってこない場合は、念のためその会社(または個人)も債権者一覧表に記載します。(債権額ゼロ円とし、「異議の留保」欄は必ず「あり」にチェックを入れること)

弁護士が債権者に受任の通知をしてから、債権者から債権届が提出されるまでは通常1ヶ月程度かかります。申立直前に新たな債権者が判明したけれど、申立てについて一刻を争う場合、債権者一覧表にはおおよその債権額を記載して提出すると言う方法があります。その際、「異議の留保」欄には必ずチェックを入れることを忘れないようにしましょう。

「異議の留保」を忘れないようにしましょう。

前項で、「異議の留保」欄は必ず「あり」にチェックを入れることを強調しましたが、これには理由があります。

再生手続開始決定が出されると、裁判所は、各債権者に再生手続が開始した旨の通知を送達します。この時、申立時に提出した債権者一覧表も一緒に送達され、各債権者は一覧表に記載された内容を確認し、間違いや異議がある場合は、裁判所の定めた債権届出期限までに債権届出をします。

なお、この債権届出は義務ではありませんので、再生債権者が異議の届出をしなかった場合でも、債権者一覧表に記載がある債権については、その債権者一覧表に記載されている内容・金額の債権届出がなされたものとみなすことができるとされています(民事再生法225条および244条)。

つまり、届出がなかった債権は、こちらが債権一覧表に記載した内容・金額で確定するということですね。

りか

そのとおりです。これを「みなし届出」制度といいます。もっとも、ほとんどの債権者は、支払いが停止してから再生手続開始決定前日までの利息や損害金を主張した債権届出をしてきます。

そして、債権者からの債権届出がなされた場合に、届けられた債権額に異議がある場合は、申立人側は異議申述期間内に異議を述べることができますが、それは、「債権者一覧表において異議の留保をした場合」に限定されています(民事再生法226条1項)。

つまり、異議の留保をしないでおくと、債権者の主張に対して反論することができなくなってしまい、債権者の主張金額で確定してしまうのです。

以上の理由から、債権者一覧表を作成する際には、必ず異議の留保をしておかなければなりません。

なお、住宅資金貸付債権(保証会社の事前求償権も含む)については、異議を述べることができませんので、異議の留保は「なし」にします(民事再生法226条5項)。

債権者一覧表の作成方法

では、債権者から提出された債権調査票に基づいて、債権者一覧表を作成していきましょう。

まずは、一般的な書き方からご説明します。
裁判所によって、使用する書式は異なりますが、記入方法はほぼ同じです。

債権者一覧表(個人再生)

個人再生 債権者一覧表
1頁
個人再生 債権者一覧表
2頁

① 貸付金債権  

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「債権者の氏名・住所等」、「現在額」欄は、債権者から提出された債権調査票のとおりに記入します。

「発生原因」欄は、債権者から提出された債権調査票または契約書を参照して記入します。資料等から、契約年月日等が分からない場合は、債権の種類のみの記入で大丈夫です。

りか

管理人は長年この方法で記入していますが、問題になったことはありません。しかし、裁判所によってはルールが異なる場合もありますので、裁判所の指示に従って下さい。

② 債権者間に委託関係あり  

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「債権者の氏名・住所等」欄には、受託会社の情報を記入し、かっこ書きで「受託会社」と記入します。そして、「その他の記載」欄に、委託会社名を記入します。

③ 代位弁済あり  

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「発生原因」欄は、求償権ではなく、原債権の貸付金債権を記入します。そして、「その他の記載」欄に、原債権者名と、代位弁済の日付を記入します。

④ 代位弁済のあと、債権譲渡  

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「発生原因」欄は、原債権の貸付金債権を記入します。そして、「その他の記載」欄に、原債権者名と代位弁済の日付、代位弁済をした会社名と債権譲渡の日付を記入します。

⑤ 同一債権者に複数の債権  

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同一債権者に、発生原因の異なる複数の債権がある場合は、債権番号に枝番を付けます。

⑥ 第三者弁済  

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「発生原因」欄は、求償権ではなく、原債権の立替金債権を記入します。そして、「その他の記載」欄に、原債権者名と、第三者弁済の日付を記入します。

※この画像では、日付を記入するのを忘れてしまいましたが、できるだけ記入しましょう

第三者弁済についてはこちらの記事で詳しく解説しています

⑦ 債務名義  

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判決、支払督促、調停調書等の債務名義がある場合は、「その他の記載」欄に、裁判所名・事件番号・債務名義の種類を記入します。

また、申立書には、債務名義の写しを添付します。

⑧ 保証債務  

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申立人が、他者の借り入れの保証人になっている場合です。「発生原因」欄に主債務者の氏名を記入します。

⑨ 住宅資金貸付債権  

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住宅資金貸付債権の場合は、「異議の留保」欄は「なし」、「その他の記載」欄の「別紙記載のとおり」にチェックを入れます。

さらに、「表-1」に移動し、住宅資金特別条項を定める予定がある場合には、「あり」にチェックを入れ、債権者番号と債権額を記入します。

「異議の留保」を「なし」とするのは、住宅資金貸付債権(保証会社の事前求償権も含む)については、異議を述べることができないからです(民事再生法226条5項)。

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特殊な事例の書き方

個人再生手続きで取り扱う債権は、前回の記事で解説したように、一般的なものばかりとは限りません。

再生債権についてはこちらの記事で詳しく解説しています

ここからは、再生債権として記入すべきかどうか、また、どのように記入すれば良いのか迷いがちな事例についてご説明します。

別除権付債権

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「現在額」欄は、担保不足見込み額でははなく、債権全額を記入し、「その他の記載」欄の「別紙記載のとおり」にチェックを入れます。

さらに、「表-2」に移動し、債権者番号を記入します。そして、「別除権の行使により弁済が見込まれる額」欄には、別除権の行使によりその債権者に対して返済できると見込まれる額(返済見込額)を記入し、全債権額からその返済見込額を差し引いた金額を「担保不足見込額」欄に記入します。

なお、不動産業者や中古車買取業者等2社から査定書を取り付け、その平均価格を担保物の価格とします。(申立書には、査定書の写しを添付します。)


「別除権の目的」欄には、別除権(抵当権等の担保権)の対象(目的)となっている財産を記入します。

将来の求償権

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申立人の借り入れについて、保証人(個人だけでなく、保証会社も含む)がいる場合です。

申立人が個人再生手続きをとることによって、保証人は、債権者から保証債務の履行を求められることになります。そして、将来、保証人が債権者に弁済した場合に、保証人は主債務者である申立人に対してその償還を求める権利があり、このような償還請求のことを求償といいます。

債権者一覧表には、この「将来の求償権」も再生債権として記入する必要がありますが、申立時点では、求償は行われていませんので、債権額は0円とします。

りか

住宅ローンの保証会社も「将来の求償権」として同様に記入しますが、「異議の留保」は「なし」にします。

将来の求償権者には受任を通知する必要はありませんが、求償権者が申立人の親族や親しい友人である場合には、申立人から、個人再生手続きをとる予定であることと、申立人が個人再生手続申立てを行えば、債権者から保証人に対して請求があることを事前に伝えておいたほうが良いでしょう。

なお、求償権者が再生手続開始後に債権者に対して弁済等をしたときは、その債権の全額が消滅した場合に限り、求償権者は、その求償権の範囲内において、債権者の権利を再生債権者として行使することができます。(民事再生法86条2項、破産法104条項)
求償権者は、債権届出期間が経過した後でも、再生債権の届出名義の変更を行うことができます。(民事再生法96条)

非減免債権

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非減免債権も再生債権ですので、必ず記入します。養育費や婚姻費用なども、開始決定時に弁済期が到来しているものは再生債権として記入します。

住宅資金貸付の連帯保証債務履行請求権(主債務者も同時に申立て)

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住宅資金貸付の連帯保証債務履行請求権の場合は、「発生原因」欄に主債務者の氏名を記入し、「異議の留保」欄は「なし」、「その他の記載」欄の「別紙記載のとおり」にチェックを入れます。

さらに、「表-1」に移動し、必要事項を記入します。

「異議の留保」を「なし」とするのは、住宅資金貸付債権(保証会社の事前求償権も含む)については、異議を述べることができないからです(民事再生法226条5項)。

住宅ローンの連帯保証人だけが個人再生を申し立てた場合には、住宅資金特別条項を利用することはできません。必ず、主債務者と連帯保証人が同時に申立てをする必要があります。

住宅資金貸付債権について、保証会社の連帯保証債務履行請求権

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住宅を購入する際に、夫が主債務者、保証会社が連帯保証人となって住宅ローンを借り入れ、妻が保証会社の夫に対する求償権について連帯保証をするというケースがあります。

債権者一覧表には、この「事前求償権」も記入する必要がありますが、申立時点では、求償は行われていませんので、債権額は0円とします。

なお、この場合、住宅ローン保証会社の求償権の連帯保証人である妻は、個人再生における住宅資金特別条項を利用することはできません。妻が負担している債務は、住宅ローンそのものではなく、住宅ローン保証会社の求償権に係る連帯保証債務であり、民事再生法に定める「住宅資金貸付債権」とは認められないからです。

しかし、通常は妻だけでなく夫も同時に個人再生申立てを行い、夫が住宅資金特別条項を利用して住宅ローンを支払っていくことになりますので、この求償権が実行されることはほぼありません。

りか

「異議の留保」を「あり」としているのは、住宅資金貸付債権にあたらないからです。
もっとも、この債権に対して異議を述べる機会はないと思います。

住宅資金貸付債権について、保証会社が全額返済した場合

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住宅資金貸付債権について保証会社が全額代位弁済した場合に、住宅資金特別条項を定める再生計画案を提出する予定がある場合は、「発生原因」欄には、求償権ではなく住宅資金貸付債権(原債権)を記入します。そして「異議の留保」欄は「なし」、「その他の記載」欄の「別紙記載のとおり」にチェックを入れ、原債権者名と住所、代位弁済の日付を記入します。

さらに、「表-1」に移動し、必要事項を記入します。

「異議の留保」を「なし」とするのは、住宅資金貸付債権(保証会社の事前求償権も含む)については、異議を述べることができないからです(民事再生法226条5項)。

債権者一覧表の訂正方法

裁判所へ申立書を提出した後で、債権者のもれに気付いた場合や、代位弁済・債権譲渡の通知を受けた場合は、提出済みの債権者一覧表を訂正する必要があります。

民事再生法には、債権者一覧表の記載の訂正や、再生債務者側からの再生債権者・再生債権の追加・削除に関する規定が存在しません。しかし、事実上、申立てから再生手続開始決定までは、債権者一覧表の修正や債権者の追完が可能です。

具体的には、債権者を追加する旨(または、変更する旨)の上申書を提出し、さらに、訂正した債権者一覧表を提出します。

債権者追加の上申書

債権者追加上申書
  • 提出するのは、裁判所用1通のみです。
  • 添付書類として、債権の存在を証明する書類の写しを提出します。
  • 訂正した債権者一覧表も一緒に提出します。
    • 訂正印や訂正申立書等での訂正はしません。
りか

管理人のこれまでの実務経験では、上記の対応で問題が生じたことはありませんが、債権者の漏れや変更が発覚した場合は速やかに裁判所へお問い合わせ下さい。

おわりに 

以上、個人再生における、債権者一覧表の作成方法について解説しました。

債権者一覧表の記載には、多少間違いがあっても訂正ができますが、債権者の取りこぼしだけはないように気を付けましょう。

りか

今日も笑顔でがんばりましょう!

      

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