審判に誤記があった場合の対処方法について解説していきます。
裁判所が発行する書類でも、計算ミスや誤記がある場合があります。今回は、審判が間違っていた場合の更正手続きについてご説明します。
審判の間違いに気づいたら
裁判所が発行する書類、それも、審判等に間違いがあるはずなどない、と思いたいところですが、人間のすることですので、時には間違いも起こります。
間違いがあるならば直してもらえば済む話なのですが、厄介なのは、この間違いに気が付くのは、大抵、不動産登記や銀行口座の解約など、審判に基づいて何らかの手続きを行うために関係機関に出向いた時なのです・・・。
審判や判決の類を受け取ったらすぐに内容を精査する癖を付けなければとは思うのですが、忙しいことを言い訳にして、つい怠ってしまうのです。
さて、家事事件手続法77条には、「審判に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、家庭裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。」との規定があります。
審判に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、家庭裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。
2 更正決定は、裁判書を作成してしなければならない。
3 更正決定に対しては、更正後の審判が原審判であるとした場合に即時抗告をすることができる者に限り、即時抗告をすることができる。
4 第1項の申立てを不適法として却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5 審判に対し適法な即時抗告があったときは、前2項の即時抗告は、することができない。
出典:e-Govポータル 家事事件手続法77条 (更正決定)
いつでも更正決定をしてもらえるのですが、家庭裁判所が更正決定をした場合、その更正決定が家庭裁判所から相手方に送達され、即時抗告期間を経て確定するまでに最短でも15日程度を要します(即時抗告期間は2週間です)。さらに、相手方が複数で、代理人弁護士がついていないケースでは、送達に手間取り、確定までに時間がかかる場合もあります。
よって、審判の間違いに気がついた場合は、一刻も早く家庭裁判所に連絡をして、更正決定を出してもらうようにしましょう。
次項では、具体的な更正手続きについて解説していきます。
審判更正手続きの手順
審判の更正手続きは、以下の手順で行います。
審判の間違いに気が付いたら、まずは家庭裁判所の担当書記官に電話連絡をしましょう。
家庭裁判所が職権で更正を行うか、当事者側から更正決定の申立書を提出しなければならないかの判断を仰ぐためです。
このとき、審判のなかで間違っている部分と、正しい表記等についても説明します。
家庭裁判所に更正決定の申立書を提出します。
家庭裁判所が職権で更正決定する場合は、この「STEP2」は飛ばして「STEP3」に進みます。
更正決定の申立書
- 家庭裁判所に提出するのは、正本1通のみです。
- 手数料(収入印紙)は不要です。
- 相手方に更正決定を送達するための切手を添付します。
- 必要な切手については裁判所におたずね下さい。
- 家庭裁判所が遠方の場合は郵送で提出します。
- その際、更正決定正本を受け取るための返信用封筒(切手貼付)も添付します。
更正決定は、申立書を提出した当日、遅くとも翌日には出されます。
家庭裁判所から連絡がありますので、決定正本を受け取りに行きましょう。なお、裁判所が遠方の場合は事務所に郵送で届きます。
この更正決定は、相手方にも送達されます。
家庭裁判所の更正決定に対して、一定の期間内に相手方からの即時抗告(異議申立)がなければ、更正決定が確定します。
相手方の異議申立期間は、決定正本を受け取った日の翌日から2週間です(家事事件手続法86条)。
更正決定が確定したら、更正決定の確定証明書を取得します。
確定証明書の交付申請書式はこちら(当サイト内の別記事です。)
この書式の「11」の欄に、「更正決定確定証明書1通」と記入します。手数料は、1通につき収入印紙150円です。
無事、審判の誤りが更正されましたので、審判に基づいて、不動産登記や銀行口座の解約などの手続きを行うことができます。
なお、各種手続きを行う際には、審判とその確定証明書だけでなく、更正決定正本とその確定証明書も必要ですので、忘れないように気を付けましょう。
民事訴訟の判決更正手続き
ここまで、審判に誤記があった場合の対処方法について解説しましたが、民事訴訟法にも、「判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。」との規定があります。
判決に計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、いつでも更正決定をすることができる。2 更正決定に対しては、即時抗告をすることができる。ただし、判決に対し適法な控訴があったときは、この限りでない。
出典:e-Govポータル 民事訴訟法257条 (更正決定)
そして、民事訴訟の判決を更正する場合にも、審判の更正と同様の手続きで行います。
異なる点は、審判の更正決定に対する即時抗告期間が2週間だったのに対して、判決の更正決定に対する即時抗告期間は1週間であることです。
つまり、判決更正の場合、相手方の異議申立期間は、決定正本を受け取った日の翌日から1週間です(民事訴訟法332条)。
即時抗告期間以外は、判決更正決定についても確定証明書が必要になる点など、全く同じです。
判決更正決定の確定証明書は、判決確定証明書と同様の方法で申請します
おわりに
以上、審判に誤記があった場合の対処方法について解説しました。
審判を受け取ったらすぐに内容を確認し、間違いがあった場合は迅速に更正手続きを行いましょう。
今日も笑顔でがんばりましょう!