再生計画案の書き方と、再生計画案提出時に一緒に提出する書類について解説していきます。
今回の記事では、住宅資金特別条項を定めない場合の再生計画案についてご説明します。
再生計画案の作成・提出にあたって
再生手続には、「給与所得者等」と「小規模個人」の2種類がありますが、再生計画案の作成方法は、どちらの場合でも同じです。
この記事では、「給与所得者等」として書類を作成していますが、「小規模個人」の場合は、書式の中で、「給与所得者等」となっている部分を、「小規模個人」に修正するだけです。
再生計画案の提出時期について
再生計画案の提出時期については、民事再生法および民事再生規則にその定めがあります。
再生計画案の提出期限
再生計画案の提出期限については、民事再生規則第84条1項において、「特別の事情がある場合を除き、一般調査期間の末日から2月以内の日」とされています。
これだけではいつが提出期限になるのか分かりにくいですが、開始決定時に、裁判所から、債権届出期間等それぞれの手続きの期限等が記載された今後のスケジュール一覧表が交付されます。
そのスケジュール表に再生計画案の提出期限も記載されていますので確認しましょう。
再生計画案の提出開始時期
再生計画案の提出開始時期については、債権届出期間が満了したあと、あるいは債権届出期間が満了する前でも、提出期限までであればいつでも提出可能です(民事再生法第163条および同第164条)。
債権届出期間満了後に提出するということは分かりました。
でも、具体的には、いつごろ提出すれば良いんでしょうか?
準備ができ次第、いつでも大丈夫ですよ。
ただし、他の業務との兼ね合いや不測の事態が起こることを考慮して、余裕をもって提出するようにしましょう。
1 再生債務者等は、債権届出期間の満了後裁判所の定める期間内に、再生計画案を作成して裁判所に提出しなければならない。
2 再生債務者(管財人が選任されている場合に限る。)又は届出再生債権者は、裁判所の定める期間内に、再生計画案を作成して裁判所に提出することができる。
3 裁判所は、申立てにより又は職権で、前2項の規定により定めた期間を伸長することができる。(再生計画案の事前提出)
出典:e-Govポータル 民事再生法163条 (再生計画案の提出時期)
1 再生債務者等は、前条第一項の規定にかかわらず、再生手続開始の申立て後債権届出期間の満了前に、再生計画案を提出することができる。
2 前項の場合には、第157条及び第159条に規定する事項を定めないで、再生計画案を提出することができる。この場合においては、債権届出期間の満了後裁判所の定める期間内に、これらの事項について、再生計画案の条項を補充しなければならない。
出典:e-Govポータル 民事再生法164条
1 法第163条(再生計画案の提出時期)第1項に規定する期間の末日は、特別の事情がある場合を除き、一般調査期間の末日から2月以内の日としなければならない。
出典:e-Govポータル 民事再生規則84条 (再生計画案の提出時期)
2 前項の期間(法第163条第3項の規定により期間が伸長されたときは、その伸長された期間)内に再生計画案を裁判所に提出することができないときは、再生債務者等は、当該期間内に、その旨及びその理由を記載した報告書を裁判所に提出しなければならない。
3 法第163条第3項の規定による期間の伸長は、特別の事情がある場合を除き、2回を超えてすることができない。
裁判所に提出する書類
返済計画案提出期限までに、裁判所に提出する書類は以下のとおりです。
全ての書類は、裁判所用1通のみの提出です。
再生監督委員が選任されている場合は、副本を再生監督委員に直接お届けしましょう。
前回の記事で作成した書類
- 財産目録
- 清算価値算出シート
- 返済総額算出シート
- 再生計画による返済計画表
前回の記事はこちら
今回の記事で作成する書類
- 再生計画案
- 財産状況報告書
裁判所により提出時期が異なるかもしれない書類
- 申立以降の家計表一式
当地ではここで挙げた書類全てを同時に提出する必要がありますが、裁判所によっては、再生計画案と一緒に提出しなければならない書類が異なる場合があります。管轄裁判所の運用をご確認下さい。
再生計画案の書き方
住宅資金特別条項の定めがない場合の再生計画案です。
この書式は、個々のケースに応じて、事件番号・再生債務者氏名と、赤字の部分のみ修正して使用します。
再生計画案
再生計画案の書き方
- 免除率を記入します。
- 支払い方法を記入します。
- 毎月の支払いの場合は、「毎月支払う方法」とし、「上記確定日の属する月の翌月を第1回目として、以後毎月末日限り合計〇回、各〇分の1の割合による金額を支払う」と記入します。〇の部分は、返済回数を入れます。
- 3ヵ月に1回の支払いの場合は、「3ヵ月ごとに支払う方法」とし、「上記確定日の属する月の翌月を第1回目として、以後3ヵ月ごとに合計〇回、各月の末日限り、各〇分の1の割合による金額を支払う」と記入します。〇の部分は、返済回数を入れます。
- 少額の再生債権の弁済の時期について別段の定めをする場合
- 少額の再生債権について、初回にその全額を支払う場合の書き方です。
- 少額の再生債権がない場合は、「2 その他の方法」を全部削除します。
なお、再生計画による弁済期間は、原則として3年です。この書式では5年に延長してもらうことを前提にしていますが、その場合、裁判所によっては弁済期間延長の上申書の提出を求められることがあります。
弁済期間延長の上申書についてはこちら
再生計画案の修正
誤記などの理由により、裁判所(または再生監督委員)から、再生計画案の修正を求められる場合があります。
再生計画案の修正に関して、民事再生法167条には、「裁判所の許可を得て」とありますが、実務上は、裁判所の方からミスを指摘されて修正を促されることがほとんどです。再生債務者側から許可申請書などを提出する手続が要求されるわけではありません。
再生計画案の提出者は、裁判所の許可を得て、再生計画案を修正することができる。ただし、再生計画案を決議に付する旨の決定がされた後は、この限りでない。
出典:e-Govポータル 民事再生法167条 (再生計画案の修正)
なお、民事再生規則第89条には、「裁判所は、再生計画案の提出者に対し、再生計画案を修正すべきことを命ずることができる。」との規定があります。
再生計画案の修正方法
再生計画案を修正する場合は、訂正印や訂正申立書によってするのではなく、修正した再生計画案そのものを再提出します。
再生計画案の修正方法
財産状況報告書
再生計画案提出の際には、前回の記事で作成した書類の他に、財産状況報告書も提出します。
裁判所によっては、財産状況報告書の提出時期が異なる場合があります。管轄裁判所の運用をご確認下さい。
財産状況報告書
財産状況報告書は、特段の事情がない限り、事件番号・再生債務者氏名と、赤字の部分のみ修正します。
財産状況等報告書
財産状況等報告書に添付する書類
- 財産目録
- 財産目録のうち、申立以降変動があったものに関する疎明資料
- 通帳写し、保険解約返戻金証明書、退職金証明書など
財産目録の作成方法についてはこちら
返済資金の積み立てができていない場合の報告書
当地では、再生債務者に履行可能性があること(=再生計画に基づく分割金の支払が可能であること)を示すために、積立用口座に、毎月、計画弁済額の1ヵ月分以上を積み立てることが求められています。
そのため、管理人の事務所では、再生債務者名義の積立専用口座に、受任時から再生計画案の認可決定がなされるまで、毎月、計画弁済額を積み立ててもらっています。
そして、積立用口座に入金したお金を、途中で出金することは御法度です。
この積み立てを予定通り行えなかったり、途中で出金をしてしまった場合は、「再生計画が遂行される見込みがないとき」(民事再生法231条1項、241条2項1号、174条2項2号)、又は「再生計画が遂行可能であると認めることができないとき」(住宅資金特別条項を利用した場合の要件。民事再生法231条1項、241条2項1号、202条2項2号)に当たるものとして、再生計画案を書面決議に付する旨の決定又は意見聴取に付する旨の決定を出してもらえなかったり(民事再生法230条2項,240条1項1号参照)、再生計画の認可決定がもらえなくなったりする危険が出てきます。
そのため、積み立てができていない場合は、積み立てができていない事情と、それでも再生計画による返済を行うことができるという根拠を、裁判所に対して詳しく説明する必要があります。
裁判所への説明は、「3 その他再生手続に関して必要な事項」欄に記載します。
個々の事情によりますが、具体的な金額を挙げてできるだけ詳しく説明しましょう。以下に例文を記載しておきますので参考にして下さい。
(申立後、配偶者が保証人として保証債務分を支払っているために積み立てができていない場合の例文)
「3 その他再生手続に関して必要な事項」欄に、「〇〇総合信用㈱について、再生債務者の配偶者、〇〇〇〇が連帯保証人であるので、現在のところ、毎月2万円を返済しています。返済計画によると、再生債務者は毎月5万円を積み立てる必要がありますが、この連帯保証債務返済のため、現在月3万円の積み立てになっております。再生債務者が再生計画による返済を開始すれば、連帯保証部分については5年後まで返済を猶予されることで〇〇総合信用㈱との間で合意ができておりますので、その旨ご報告致します。」 と記載します。
※ 合意書を交わしている場合は、その合意書の写しを添付しましょう。
おわりに
以上、再生計画案の書き方と、再生計画案提出時に一緒に提出する書類について解説しました。
提出した再生計画案に不備がなければ、裁判所は、書面決議に付する旨の決定(小規模個人)または意見聴取に付する旨の決定(給与所得者等)を下します。
今日も笑顔でがんばりましょう!